前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択


5 再非行や再犯に及んだ要因に対する認識

7-4-3-8図は,調査対象者のうち,保護処分歴(児童自立支援施設等送致歴のみを有する者を除く。)又は刑事処分歴がある者について,「処分を受けたあとで,あなたがふたたび非行や犯罪をしてしまったのは,どんなことが影響していたと思いますか。」との質問に対する回答状況(複数回答)を非行少年・若年犯罪者別,処分歴別に見たものである。


7-4-3-8図 再非行・再犯に及んだ要因についての認識(非行少年・若年犯罪者別・処分歴別)
7-4-3-8図 再非行・再犯に及んだ要因についての認識(非行少年・若年犯罪者別・処分歴別)

非行少年では(7-4-3-8図<1>),多い順に,「非行や犯罪をする仲間との関係が続いた(以下「非行・犯罪仲間関係」という。)」(42.9%),「学業や仕事を続けられない・仕事が見つからない(以下「学業・仕事」という。)」(31.3%),「まじめな友達が少ない・いない(以下「まじめな友達」という。)」(29.8%),「処分を軽く考えていた(以下「処分を軽視」という。)」(26.6%),「問題にぶつかるとあきらめていた(以下「あきらめ」という。)」(25.0%)などが再非行の理由として選択されており,不良交友関係,就学・就労,健全な交友関係の狭さ,処分の軽視,問題解決意欲の欠如が再非行の主要な主観的リスク要因といえる。これを保護処分歴別に見ると(7-4-3-8図<2>),保護観察歴を有する者でも少年院送致歴を有する者でも,「非行・犯罪仲間関係」(保護観察歴45.0%,少年院送致歴37.5%)が最も多く,不良交友関係が最大のリスク要因として共通に認識されている。これに次いで,少年院送致歴を有する者では,「あきらめ」(37.5%),「学業・仕事」(30.6%),「まじめな友達」(22.2%),「処分を軽視」(18.1%)の順に,保護観察歴を有する者では,「まじめな友達」(32.8%),「学業・仕事」(31.7%),「処分を軽視」(30.0%),「あきらめ」(20.0%)の順に多かった。

若年犯罪者では(7-4-3-8図<1>),多い順に「処分を軽視」(52.1%),「学業・仕事」(46.1%),「あきらめ」(42.6%),「非行・犯罪仲間関係」(41.3%),「まじめな友達」(30.9%),「落ち着いて生活できる場所がなかった」(25.9%)などが再非行・再犯の理由として選択されており,処分の軽視,就学・就労,問題解決意欲の欠如,不良交友関係が主要な主観的リスク要因であるのは非行少年と同様であるが,そのほか,生活基盤の不安定さも主観的リスク要因となっている。若年犯罪者について処分歴別に各選択肢の選択率を見ると(7-4-3-8図<3>),保護処分歴を有する若年犯罪者では,非行少年と同様の項目(「非行・犯罪仲間関係」,「処分を軽視」,「学業・仕事」,「あきらめ」,「まじめな友達」等)を選択する者が多い。一方,刑事処分歴を有する者では,罰金を除いて前刑の処分内容を問わず不良交友や就学・就労の問題が4割以上の者で主観的リスク要因となっており,罰金・執行猶予歴を有する者では,「処分を軽視」という者がおおむね半数に及び,実刑歴を有する者では,「あきらめ」(47.5%)や「落ち着いて生活できる場所がなかった」(37.7%)という問題も大きくなっている。

総じて,非行少年・若年犯罪者を問わず,再非行・再犯の主観的要因としては,不良交友,就学・就労の問題が主となっており,これに加えて,処分の軽視,問題解決意欲の欠如などの資質的な問題も挙げられるが,全般的に若年犯罪者の方が,それぞれの問題の選択率が高くなっており,特に処分の軽視,問題解決意欲の欠如についてより高くなっている。

なお,児童自立支援施設等送致歴を有する者(他の処分歴を有する者に限る。非行少年9人,若年犯罪者22人)について,再非行・再犯に及んだ要因に対する認識の特徴を見ると,非行少年では,「努力しても周囲の人が認めてくれない」の選択率が33.3%と,同歴なしの者(10.3%)に比べて高い。また,若年犯罪者では「あきらめ」(68.2%,同歴なしの者40.7%)が高く,これに次いで「学業・仕事」(63.6%,同44.7%),「落ち着いて生活できる場所がなかった」(50.0%,同24.1%)の選択率も高いことが目立ち,児童自立支援施設等送致歴のある若年犯罪者では,問題解決意欲の欠如,就学・就労,生活基盤の問題の影響がより大きいことがうかがえる。