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第4節 刑事司法分野における研修協力・法制度整備支援等
1 国連アジア極東犯罪防止研修所における研修協力等

国連アジア極東犯罪防止研修所UNAFEI:United Nations Asia and Far East Institute for the Prevention of Crime and the Treatment of Offenders)は,日本国政府と国連の協定に基づき,1962年に設置され,以後共同で運営されている国連の地域研修所であり,刑事司法分野における研修,研究及び調査の実施を通じて,アジア太平洋地域を始めとする各国の刑事司法の健全な発展と相互協力の強化に努めている。

UNAFEIの活動の中心は,開発途上国の刑事司法実務家に対する研修業務であり,毎年,3回の国際研修(2011年9月末現在で通算149回)と1回の汚職防止刑事司法支援研修を行い,それぞれのテーマに即した内外の最新の知見を提供している。これらの研修には,複数国からの海外参加者に加え,我が国の裁判官,検察官,矯正職員,保護観察官等も研修員として参加しており,比較法的観点から,相互理解の促進と経験の共有が図られるように工夫されている。国際研修は,毎回研修テーマを選んで行っており,近年では,証人の保護及び協力確保策,犯罪収益の剥奪及びマネー・ローンダリング対策,犯罪被害者のための施策,裁判官・検察官・法執行機関職員の倫理及び行動規範,薬物犯罪者の処遇,犯罪者処遇における社会との連携,過剰収容対策等を取り上げている。

また,複数の参加国を対象とする新たな取組として,2007年以来,毎年,グッド・ガバナンス・セミナーを開催しているほか,特定の国又は地域の実務家を対象とするものとして,現在,中国犯罪防止及び刑事司法研修,ケニア非行少年処遇制度研修,中央アジア刑事司法制度研修を実施している。

刑事司法分野における能力向上支援の重要性は,G8司法・内務大臣会議東京会合で採択された「キャパシティ・ビルディング支援に関するG8司法・内務閣僚宣言」(2008年6月)においても確認されており,UNAFEIが研修等を通じて果たすべき役割は,ますます重要なものとなっている。

UNAFEIの研修・セミナーに参加した刑事司法関係者は,我が国を含む130か国から4,500人以上に上っており(2011年9月末現在),その中には,それぞれの国において,最高裁判所長官,法務大臣,検事総長その他の重要な地位に昇進した者が多数含まれている。UNAFEIのネットワークは,我が国が刑事司法分野における国際協力を推進していく上で大きな財産となっている。

さらに,UNAFEIは,国連の犯罪防止・刑事司法プログラムの一翼を担う立場から,毎年,犯罪防止刑事司法委員会に招へいされているほか,国連犯罪防止刑事司法会議の実施にも協力し,その第12回会議(2010年4月)においては,「矯正施設における過剰収容に対する戦略とベスト・プラクティス」をテーマとした公式ワークショップを企画運営した。