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 平成20年版 犯罪白書 第2編/第6章/第4節/2 

2 法整備支援

 法整備支援とは,開発途上国等に対する法令案作成に関する支援のほか,法令の運用のための制度・体制整備及びこれらに従事する法律専門家の人材育成に関する支援をいう。我が国は,1994年以来,アジアの開発途上国等を対象として,「法の支配」の確立を目指す法整備支援活動を展開してきた。法整備支援は,我が国政府のODA政策の一つとして位置付けられており,ODA大綱(改訂版・2003年8月閣議決定)においてその重要性が指摘され,ODA中期政策(2005年2月閣議決定)の中でも,法整備支援を進める必要性が明示されている。また,2008年1月に法務大臣も出席して開催された内閣の海外経済協力会議においては,法整備支援が途上国への法の支配の定着,途上国の持続的成長のための環境整備及びグローバルなルール遵守の確保などの点で大きな意義を有する支援であることが確認され,我が国の今後の法整備支援の在り方について関係機関団体等との連携も図りつつ,政府としての基本計画を策定して戦略的に法整備支援を推進していくべきことが確認された。さらには,同年6月のG8司法・内務大臣会議においても,総括宣言の中のキャパシティ・ビルディング支援の部分において,司法制度及び基本法の整備,法曹養成といった司法分野における技術支援の重要性が明言された。
 開発途上国において,「法の支配」が確立し,法制度が適切に機能することによって,その国の政治・社会・経済が安定するとともに,持続的な発展が可能となり,ひいては地域の安定・発展につながる。これは,国際的な相互依存関係が一層深まり,人間生活のあらゆる面でグローバリゼーションが進む今日,我が国の安全と発展にとっても欠くことのできない前提条件である。法整備支援の重要性が近時一層強く認識されるようになっているのは,このような理由にほかならない。
 具体的な法整備支援活動の多くは,独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する開発途上国に対する技術協力プロジェクトの枠組みの中,法務省において法整備支援を専門に担当する法務総合研究所国際協力部が中心となって実施している。
 刑事司法の分野では,これまでベトナム及びラオスに対する支援が行われており,両国の最高人民検察院を対象として,検察官の実務改善と能力向上を目標に「検察官マニュアル」の作成とその普及活動などを手がけてきた。2007年度中は,JICAが実施している「ベトナム法・司法制度改革支援プロジェクト」の中で,刑事裁判実務の現状を分析して問題点を洗い出し,その解決策を提示することによって実務の改善と裁判官・検察官等の能力向上を目指す活動等が,法務総合研究所国際協力部から現地に長期専門家として派遣されている検事らを中心に,国内支援組織の助力も得て実施された。2008年度は,この実務改善活動を引き続き推進する一方,ベトナム最高人民検察院が設置を計画している「犯罪学研究センター」の設立準備のための研修が同検察院の担当者らを国内に招へいして実施されており,さらに,現地において,刑事訴訟法改正案の起草を目的としたワークショップや前記「検察官マニュアル」の続編(上訴審における検察官の活動に関するもの)の執筆支援など実施している。