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 平成20年版 犯罪白書 第2編/第6章/第1節/1 

1 国際組織犯罪対策

(1)国連における対策
 国連は,活動分野が多岐にわたるが, 犯罪による人的,物的な損失及びその社会・経済発展への悪影響を減らすこと,並びに刑事司法の国連基準・準則の履行を促進することなどにおいて,重要な役割を担っている。
 国連は,2000年の国連総会において,国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下「国際組織犯罪防止条約」という。)を採択した。この条約は,組織的な犯罪集団への参加,マネー・ローンダリング(犯罪収益の洗浄)及び腐敗行為等の犯罪化,犯罪収益の没収及びそのための国際協力,組織犯罪に係る犯罪人の引渡し,法律上の相互援助,証人の保護等について定めたものである。我が国では,2003年5月に同条約の締結につき国会承認が得られたが,関連国内法が成立していないため,未締結のままとなっている。
 また,同条約を補足するための,「人(特に女性及び児童)の取引を防止し,抑止し及び処罰するための議定書」(以下「人身取引議定書」という。),「陸路,海路及び空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書」(以下「密入国議定書」という。)及び「銃器並びにその部品及び構成部分並びに弾薬の不正な製造及び取引の防止に関する議定書」(銃器議定書)の各議定書も,2001年までに国連総会で採択された。我が国においては,2005年6月8日,人身取引議定書及び密入国議定書の締結のための国会承認が得られた(国際組織犯罪防止条約未締結のため,両議定書も未締結)。これらの国内担保法として,同月16日,人身取引等に係る罰則整備等を内容とする「刑法等の一部を改正する法律」(平成17年法律第66号)が成立し,一部を除き,同年7月12日から施行されている。
(2)リヨン・グループにおける対策
 国際組織犯罪に取り組むG8(日本,フランス,ドイツ,イタリア,英国,ロシア,カナダ,米国の総称。以下,本節において同じ。)の上級専門家会合(通称リヨン・グループ)は,1995年の先進国首脳会議(サミット)において設立が決定され, 1996年のリヨン・サミットにおいて,国際組織犯罪を効果的に抑止するための多岐にわたる措置を勧告する「国際組織犯罪と闘うための40の勧告(いわゆるリヨン・グループ40の勧告)」を発表した。その後も銃器,薬物及び人の密輸,サイバー犯罪,マネー・ローンダリング,汚職等の腐敗行為等の国際組織犯罪に対処するための捜査手法や法制等について,議論等を行っている。