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 平成19年版 犯罪白書 第7編/第5章/第5節/2 

2 ドイツ

(1)刑事立法による重罰化
 刑事立法の重罰化の傾向は,1990年代に入るころから目立ち始めていたが,1998年には刑法各則の大改正が行われた。そこでは,傷害,放火,児童に対する性的虐待の各罪の法定刑が引き上げられるなどの改正が行われた。このような傾向は,その後も続き,例えば,2003年には,児童に対する性的虐待の罪の法定刑が更に引き上げられた。

(2)社会治療施設への収容
 社会治療施設(Sozialtherapeutische Anstalt)は,自由刑執行の一形態として,特別の社会治療処遇を行う施設である。社会治療施設における処遇は,受刑者の社会化のために同施設での特別の治療が必要な場合に,受刑者の同意の下に行うことを原則としており,性犯罪,暴力犯罪,財産犯罪等を犯した者が収容されている。なお,2003年に,性犯罪受刑者のうち一定の要件を満たす者については,社会治療施設への収容が義務付けられた。

(3)改善及び保安処分
 改善及び保安処分(MaBregeln der Besserung und Sicherung)は,行為者の犯罪に対する責任からは独立したものとして,行為者による将来の犯罪行為を防止するために行われる処分である。保安監置等の自由剥奪を伴うものと,行状監督等の社会内で行われるものとがある。
 ア 保安監置
 保安監置(Unterbringung in der Sicherungsverwahrung)は,自由刑の執行終了後において更に重大な犯罪を行うおそれのある者について,その者から社会を防衛するため,刑の執行終了後も更にその者を拘禁する処分である。
 1998年,性犯罪や危険な方法による傷害を犯した者について保安監置を言い渡し得る要件が緩和された。また,2002年,判決の時点では行為者が社会にとって危険であるか否か確定できない場合において,裁判所が,一定の期間保安監置の命令を留保できる制度が創設された。さらに,2004年,自由刑の執行が終了する前に,当該受刑者が社会にとって重大な危険性を有することが明らかになった場合において,裁判所が,裁量で事後的に保安監置を命ずることができる制度が導入された。
 イ 行状監督
 行状監督(Fuhrungsaufsicht)は,自由刑の執行終了後において更に犯罪を行うおそれのある者等について,その犯罪を予防するため,一定の期間,保護観察官及び行状監督所による援助を行う一方で,行状監督所により生活を監督する処分である。