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 平成19年版 犯罪白書 第7編/第4章/第3節 

第3節 まとめ

 本調査の対象となった128人の殺人再犯者には,暴力団関係者が目立った(調査対象者の52.3%)が,劣悪な生育環境下にいた者は少なかった。むしろ,最も多く目に止まったのは,相手を殺害するほどの事情がないのに,その場の激情や興奮に単純に支配されて凶行に及んだケースや,自己の欲求が認められなかったり,被害者とのあつれきが生じた場合に,その解消を殺害という一方的な方法で図ろうとしたケースである。
 以下,本調査の対象となった殺人再犯者に見られた特徴を6点指摘しておきたい。
[1] 初度事犯と再度事犯との比較から,動機・原因,犯行の手口,被害者との関係等が類似しているケースが目立った。
[2] 最も多かった動機・原因は,「憤まん・激情」によるもので,多くの殺人再犯者は,高じた怒りの感情を適切にコントロールできないまま,殺人事犯を犯していた。
[3] ほとんどの殺人再犯者は,いくつかの犯行動機・原因に基づいて殺人事犯を繰り返していた。
[4] 凶悪・粗暴事犯と暴力団との関係が強く認められた。
[5] 飲酒の影響を受けて殺人事犯に至った者が少なくなかった。
[6] 殺人再犯者には,限られた者との対人関係しか持てず,単身で不安定な生活をしていた者が多かった。