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 平成18年版 犯罪白書 第6編/第3章/第4節/2 

2 過剰収容等を解消するための取組

 刑事施設におけるこのような厳しい状況を改善し,受刑者処遇の充実強化を実現するための基盤整備の一部として,次のような方策が講じられている。
 なお,被収容人員の適正化を図るとともに,犯罪者の再犯の防止及び社会復帰を促進するという観点から,平成18年7月26日,法務大臣から法制審議会に対し,社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否,中間処遇の在り方及び保釈の在り方など刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について諮問が行われた。

(1) 収容定員の拡大

 刑事施設の改築拡大等により,近時,収容定員の拡大が図られている。刑事施設における収容定員全体を平成13年12月31日現在と17年同日とで比べて見た場合,6万4,727人から7万6,043人へと4年間で1万1,316人(既決については9,995人,未決については1,321人)増加した(法務省矯正局の資料による。)。しかし,被収容者数が依然増加しているため,過剰収容状態を大幅に緩和するところまで至っていない。

(2) PFIの手法を活用した刑事施設の整備・運営

 PFI(Private Finance Initiative)とは,公共施設等の建設,維持管理,運営等を民間の資金,ノウハウを活用して行う新たな手法をいう。英国,米国等では,既に刑事施設の整備・運営に民間資金等が活用されている。我が国においても,効率的かつ効果的に社会資本を整備することを目的に制定された民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号)に基づき,過剰収容を緩和し,新しい刑事施設の運営の在り方を模索するなどの観点から,PFIの手法を活用した刑事施設の整備・運営の必要性が検討された。その結果,山口県美祢市に「美祢社会復帰促進センター(仮称)」を建設することとなった。
 同センターは,「官民協働の運営」を行うとともに,「地域との共生」を図ることにより,「国民に理解され,支えられる刑務所」を整備するとの方針の下,「構造改革特別区域制度」を活用し,施設の設計・建設だけでなく,施設運営面においても民間事業者のノウハウ等を活用する。犯罪傾向の進んでいない受刑者1,000人(男子,女子各500人)を収容する施設として,平成19年4月の運営開始を予定している。さらに,第2号の刑務所PFI事業として,島根県浜田市に「島根あさひ社会復帰促進センター(仮称)」を整備・運営する事業が予定されている。このほか,栃木県さくら市及び兵庫県加古川市において,国が建設を進めている施設についても,それぞれの運営事業の一部を第3号及び第4号の刑務所PFI事業として実施することとしている。
 これら新たな形態の刑事施設の登場により,国,民間業者,地域社会とが連携した受刑者処遇の一層の発展が期待される(6-3-4-2図参照)。

6-3-4-2図 美祢社会復帰促進センターの概要

(3) アウトソーシング

 矯正業務の一部を民間に委託するアウトソーシングは,職員の業務負担の軽減等を目的として,積極的に活用されている。最近の民間受託数の推移を見ると,平成14年度の35人から17年度は617人と大きく増加している。委託業務の種類についても,従来の運転,作業,通訳・翻訳の業務のほか,管理栄養士,領置・購入,正門警備等の業務が加わるなど,その範囲も拡大されている(法務省矯正局の資料による。)。