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 平成18年版 犯罪白書 第6編/第1章/2 

2 治安回復に関連する諸施策

 こうした情勢を受け,政府は,平成15年12月の犯罪対策閣僚会議において,今後5年間を目途に,国民の治安に対する不安感を解消し,犯罪の増勢に歯止めをかけ,治安の危機的状況を脱することを目標として,「犯罪に強い社会の実現のための行動計画―「世界一安全な国,日本」の復活を目指して―」を策定し,これに盛り込まれた諸施策をはじめとして,様々な施策を立案・実施している。
 他方,一般刑法犯の認知件数は,平成15年から減少に転じ,17年は約227万件となり,一般刑法犯の検挙率も,17年には28.6%まで改善された。
 この認知件数の減少等が,「世界一安全な国,日本」の復活につながっていくかどうかについては,楽観を許さない。一般刑法犯の認知件数は3年連続して減少したとはいえ,平成17年のそれは,その10年前と比較しても約25%高い水準にあり,同じく一般刑法犯の検挙率も40%前後であった10年前と比較すれば,明らかに低い水準にある。しかも,この認知件数の減少や検挙率の改善は,専ら窃盗についての数値の改善によるものであり,窃盗を除く一般刑法犯について見ると,認知件数の増加や検挙率の低下は,16年まで続いており,17年には,それぞれ改善を見たものの,近時においても,子供を標的とした特異な凶悪犯罪が続発するなど,今後の犯罪動向には,なお予断を許さないものがある。
 最近における世論調査の結果等を見ても,治安に対する国民の不安は,改善されているとは言い難い。このような状況の中,政府は犯罪の予防等治安回復のため,引き続き様々な取組を幅広く行っている。
 さらに,性犯罪前科を有する者による性的な動機に基づく凶悪犯罪の発生等によって,性犯罪や性犯罪者の再犯の実態が社会の関心を集めた。そして,性犯罪の発生防止のための対策,取り分け性犯罪者の再犯防止対策の確立が強く求められており,これを受けてより実効性のある処遇上の取組等が始められている。また,保護観察対象者による重大な再犯事件の発生を契機として,社会内処遇の在り方が問われ,新たな取組を求められている。