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 平成17年版 犯罪白書 第4編/第6章/第2節/2 

2 少年司法制度

 少年刑事司法の分野には,その基本法として,刑法及び刑事訴訟法の特別法である少年裁判所法がある。
 少年裁判所(Jugendgericht)は,少年による非行(成人の場合に刑罰を科せられるべき行為)事件のほか,一定の場合(環境的諸条件をも考慮して,行為者の人格を全体的に評価すると,行為時における道徳的及び精神的発育から見て,まだ少年と同等であることが明らかである場合,又は行為の種類,事情若しくは動機から見て,少年非行として取り扱われるべき場合)には,青年による非行事件を管轄する。
 少年裁判所には,地方裁判所(Landgericht)の少年裁判部(Jugendkammer),少年参審裁判所(Jugendshoffengericht),少年係裁判官(Jugendrichter)の3種類がある。地方裁判所の少年裁判部は,裁判長を含む3人の裁判官と2人の少年参審員から構成される大少年部により,一定の重大事件を管轄する。少年参審裁判所は,区裁判所(Amtsgericht)に置かれ,裁判長の少年係裁判官と2人の少年参審員から構成され,他の2種類の少年裁判所の管轄に属しないすべての非行事件について管轄を有する。少年係裁判官は,区裁判所に所属し,比較的軽微な事件を管轄し,教育処分,懲戒処分又は1年以下の少年刑の宣告を行うことができる。少年の非行事件の少年裁判所での審理は,判決の宣告を含め,公開されない(青年の非行事件の場合は,原則として公開される。)。
 検察官は,事実について十分な証拠があり,起訴可能な場合であっても,事案が軽微な場合,教育的措置が既に実施又は開始されている場合等には,起訴を猶予することができる。検察官による起訴の後においても,同様の場合等には,裁判官は,手続を中止することができる。
 少年裁判所は,有罪と認定した少年及び青年に対し,第一次的に教育処分(ErziehungsmaBregeln)を命じ,教育処分では不十分な場合には,懲戒処分(Zuchtmittel)又は少年刑(Jugendstrafe)を科する。
 教育処分には,指示(Weisungen)の付与及び(少年に対してのみ)教育援助を請求させる命令がある。指示は,少年又は青年の生活態度を規制し,かつ,それによってその教育を促進し,確保するための命令又は禁止である。
 懲戒処分には,戒告(Verwarnung),義務の賦課(Erteilung von Auflagen)及び少年拘禁(Jugendarrest)がある。義務の賦課は,その行為による損害のできる限りの回復,被害者への謝罪,労務の提供,公共施設のための一定金額の支払を内容とする。少年拘禁には,休日拘禁(毎週の休日につき1回の休日又は2回の休日の拘禁),短期拘禁(休日拘禁に代えて科せられるもので,2日間の短期拘禁が1回の休日拘禁と同等のものとされる。),継続拘禁(1週間以上4週間以下の拘禁)がある。
 少年刑は,少年刑務所における自由の剥奪であり,少年の場合,その刑期は,短期6か月,長期5年(青年の場合は10年)が原則であるが,法定刑の上限が10年を超える自由刑である重罪の場合には,長期は10年となる。
 なお,教育処分と懲戒処分は,併科することができ,少年刑と指示の付与,義務の賦課等は,併科することができる。