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 平成17年版 犯罪白書 第4編/第5章/第2節/2 

2 刑事裁判

 家庭裁判所の審判によって検察官送致とされた原則逆送少年が,刑事裁判において,どのような裁判を受けているかを見る。なお,ここでは,地方裁判所での審理の結果,家庭裁判所に移送された少年を含めて分析した。
 検察官送致とされた原則逆送少年139人の起訴罪名別人員は,殺人22人,承諾殺人1人,強盗致死16人,傷害致死82人,危険運転致死18人であった。
 平成17年8月31日までに通常第一審で終局裁判を受けた133人のうち,裁判時に少年であった者は108人(81.2%),成人に達していた者は25人(18.8%)であった。
 通常第一審における罪名別裁判結果(裁判時少年)は,4-5-2-8表のとおりである。
 無期懲役5人(4.6%),10年以上の定期刑4人(3.7%),不定期刑86人(79.6%),3年以下の定期刑(執行猶予)3人(2.8%)であった。また,10人(9.3%)が保護処分相当として家庭裁判所に移送され,家庭裁判所において,少年院送致とされている。なお,執行猶予とされた3人のうち1人は,傷害致死(集団型)であり,暴走族仲間に対する集団リンチの事案であって,当該少年は実行行為をしておらず,従属的な関与にとどまり,遺族に対して慰謝の措置が講ぜられていた。そのほかの2人は,危険運転致死であり,いずれも被害者が同乗の友人で,示談が成立するなどし,被害者遺族の処罰感情も緩和されていたものであった。
 通常第一審における罪名別裁判結果(裁判時成人)は,4-5-2-9表のとおりである。
 無期懲役3人(12.0%),有期懲役22人(88.0%)であり,執行猶予になった者はいなかった。

4-5-2-8表 通常第一審における罪名別裁判結果(裁判時少年)

4-5-2-9表 通常第一審における罪名別裁判結果(裁判時成人)

 地方裁判所での審理の結果,保護処分相当として再び家庭裁判所に移送され,家庭裁判所において,少年院送致とされた10人について見ると,いずれも傷害致死の事案(単独型が1件1人,集団型が6件9人)であった。集団型のうち,4件7人は暴走族仲間又は遊び仲間に対する集団リンチ,1件1人は居酒屋におけるけんか,1件1人はホームレスに対する暴行事案であった。集団型では,多くの場合,当該少年の関与は比較的従属的であった。これら10人のうち,公判中に示談が成立したものが3人(単独型1人,集団型2人(遊び仲間に対するリンチの事案,ホームレスに対する暴行事案各1人))であり,他は,示談には至っていないものの,保護者らが遺族に対し慰謝の措置のための努力をしていることがうかがわれ,裁判所が遺族感情にも配慮しながら,審判後の事情も併せて考慮し,保護処分相当性を判断していることがうかがわれる。
 これらの家庭裁判所に移送された事案について,検察官が家庭裁判所に送致した日から最終的な保護処分決定の日までの期間を見ると,4月以上1年未満であり,平均で約7月であった。