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 平成17年版 犯罪白書 第2編/第7章 

第7章 刑事司法における国際協力

 最近の我が国の犯罪情勢を見ると,外国を犯罪地とする犯罪が増加し,来日外国人による犯罪も増加するなど犯罪及び犯罪者の両面での国際化傾向が顕著であり,国外にある証拠の収集,逃亡犯罪人の確保及び引渡し等,捜査及び裁判の分野において国際協力を要する事例が相当数発生している。
 また,国際的な麻薬取引,テロ,国際犯罪組織による組織的犯罪が発生している。これに適切に対処するためにも国際協力が不可欠であり,国際連合や主要国首脳会議等において,国際協力の強化に向けた取組が展開されている。近年では,法執行のための国際協力にとどまらず,各国の刑事司法を制度面でも調和させるための国際的なスタンダード(必ずしも条約等の法規範に限らない。)策定に向けての国際協力が積極的に進められている。
 この背景事情としては,経済・社会のグローバリゼーションにより,情報通信技術や輸送手段の発展に支えられて,人・物・金銭・情報の国際的な移動が容易になり,これによって犯罪そのものの国際化がもたらされたことが挙げられる。例えば,犯罪者,銃器,麻薬等の国境を越える移動や外国の共犯者との通謀等が容易になされるだけでなく,犯罪収益を瞬時に国境を越えて移動させること等により,マネー・ローンダリング(資金洗浄)も容易になり,また,サイバー犯罪に至っては,インターネット上の国境なきサイバースペースを利用しての犯罪が敢行されるようになった。このようなグローバル化する現代犯罪に対して実効的な規制を図るためには,特定の国が自国内の犯罪対策を行うだけでは足りず,世界中から規制の緩い国・地域をなくして犯罪者に安住の地を与えないようにしなければならないという認識の下に,1990年代以降,国際連合や主要国首脳会議を含む各種の国際会議等において,刑事司法の制度面での調和に向けての国際協力が推進されてきた。