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 平成17年版 犯罪白書 第1編/第3章/第2節/1 

第2節 薬物犯罪

1 薬物犯罪の動向

(1) 覚せい剤取締法違反

 覚せい剤取締法(昭和26年法律第252号)違反(覚せい剤に係る麻薬特例法違反を含む。以下,本節において同じ。)の検挙人員の推移(昭和26年以降)は,1-3-2-1図のとおりである。
 戦後の混乱期に始まった覚せい剤の乱用は,これまで大きな二つの乱用期を経て現在に至っている。検挙人員を見ると,昭和29年に5万人台を数え,最初のピークを迎えたが,その後は急激に減少した。その背景として,同年及び30年の罰則の強化,徹底した検挙,覚せい剤の害悪に関する全国的啓蒙活動の実施等が指摘された。しかし,検挙人員は,45年以降再び増加に転じ,59年には2万4,372人となり,第二次乱用期を迎えた。その後,平成元年に2万人を割り,6年まで横ばいを続けたが,7年以降再び増加傾向に転じ,9年及び12年には2万人近くに達し,第三次乱用期を迎えた。しかし,13年以降は減少に転じ,16年は1万2,397人(前年比16.2%減)となった。

1-3-2-1図 覚せい剤取締法違反の検挙人員の推移

 覚せい剤取締法違反の違反態様別検挙人員(警察が検挙したものに限る。)及び営利犯の検挙人員(最近15年間)は,1-3-2-2表のとおりである。
 平成16年の違反態様別検挙人員は,使用が6,898人(56.4%)と最も多く,次いで,所持4,229人(34.6%),譲渡し・譲受け890人(7.3%)の順であった。
 検挙人員総数に占める営利犯の比率は,平成3年以降1〜2%台で推移していたが,16年は4.2%に上昇した。同年において,営利犯の多い違反態様は,所持が297人と最も多く,次いで,譲渡し・譲受け(107人),密輸入・密輸出(101人)の順であった。

1-3-2-2表 覚せい剤取締法違反の違反態様別検挙人員

 覚せい剤取締法違反の年齢層別検挙人員の推移(最近30年間)は,1-3-2-3図のとおりである。
 20歳代及び30歳代が多いのが目立つ。昭和52年から59年までは30歳代が最も多く,60年代以降は20歳代が最も多かったが,平成14年以降は再び30歳代が最も多くなっている。

1-3-2-3図 覚せい剤取締法違反の年齢層別検挙人員の推移

 平成16年における覚せい剤取締法違反の国籍等・違反態様別検挙人員(警察が検挙したものに限る。)は,1-3-2-4表のとおりである。

1-3-2-4表 覚せい剤取締法違反の国籍等・違反態様別検挙人員

 外国人の検挙人員は,661人で,全検挙人員の5.4%を占めている。国籍等別では,韓国・朝鮮が254人(38.4%)と最も多く,次いで,ブラジル88人(13.3%),イラン79人(12.0%)の順であった。
 違反態様を国籍等別に見ると,韓国・朝鮮及びブラジルは,使用の占める比率が高い(それぞれ51.2%,70.5%)。イランは,これが低く(7.6%),所持及び譲渡しの占める比率が合計81.0%と高い。
 来日外国人の覚せい剤取締法違反の検挙人員のうち営利目的の所持及び譲渡しの占める比率は,イランが44.6%と,他の国籍等の者と比較して著しく高率である(警察庁刑事局の資料による。)。
 違反態様別検挙人員(警察が検挙したものに限る。)に占める暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員をいう。以下,本節において同じ。)の人員(最近15年間)は,1-3-2-5表のとおりである。
 検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率は,おおむね40%台で推移しており,平成16年は44.4%(5,430人)であった。暴力団構成員等の占める比率が最も高い違反態様は,各年とも,譲渡し,所持の順であり,暴力団構成員等が密売に深く関与していることがうかがわれる。

1-3-2-5表 覚せい剤取締法違反の違反態様別検挙人員に占める暴力団構成員等の人員

(2) 麻薬取締法違反等

 麻薬取締法違反(麻薬・向精神薬に係る麻薬特例法違反を含む。以下,本節において同じ。),あへん法(昭和29年法律第71号)違反(あへんに係る麻薬特例法違反を含む。以下,本節において同じ。)及び大麻取締法(昭和23年法律第124号)違反(大麻に係る麻薬特例法違反を含む。以下,本節において同じ。)の検挙人員の推移(最近30年間)は,1-3-2-6図のとおりである。
 大麻取締法違反の検挙人員は,平成13年以降増加し,16年は過去最多の2,312人(前年比6.4%増)となった。また,麻薬取締法違反の検挙人員も,13年以降増加しており,16年は635人(同19.8%増)となった。

1-3-2-6図 麻薬取締法違反・あへん法違反・大麻取締法違反の検挙人員の推移

(3) 毒劇法違反

 毒劇法違反の送致人員の推移(最近30年間)は,1-3-2-7図のとおりである。

1-3-2-7図 毒劇法違反の送致人員の推移

 毒劇法違反の送致人員は,昭和50年代後半は3万人台で推移し,57年に過去最多の3万6,796人を記録したが,その後はおおむね減少傾向にあり,平成8年以降1万人を割り,16年は4,610人(前年比16.9%減)となった。

(4) 薬物常用者による犯罪

 薬物常用者(覚せい剤常用者,麻薬常用者,大麻常用者,あへん常習者,向精神薬常習者及び有機溶剤等乱用者をいう。)による犯罪(刑法犯及び特別法犯(交通法令違反を除く。))の検挙人員(最近10年間)は,1-3-2-8表のとおりである。
 平成16年における罪名別検挙人員を見ると,窃盗が466人と最も多く,次いで,傷害(94人),恐喝(58人)の順であった。

1-3-2-8表 薬物常用者による犯罪の罪名別検挙人員