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 昭和39年版 犯罪白書 第三編/第四章/四/3 

3 保護観察対象者の成績と終了

 前に述べたように,保護観察の担当者は,担当している対象者について,その保護観察の成績等を毎月一回,必要がある時はそのつど,保護観察所長に報告するように定められている。報告は,心身,家庭環境,交友,就学,就職等の本人の現況一般,および実施した保護観察の内容等にわたるが,担当者は,月例報告においては最後にその月における対象者の保護観察成績を,「良」,「やや良」,「普通」,「不良」の四段階にまとめて,総合評定することになっている。
 昭和三八年七月分の成績報告書について,法務省保護局が行なった調査はIII-90表のとおりであって,保護観察種別では少年院仮退院者の保護観察成績が著しく悪いことが目だろ。また,本人が他の保護観察所管内へ長期旅行中の場合や,同じく他管内に転居した事実が判明していても,居住確認照会の手続中であって,まだケースの移送がなされていない場合は,一般的に成績が悪い。

III-90表 保護観察評定状況調査(昭和38年7月)

 保護観察の成績が良好で,保護観察を続ける必要がないまでに更生した人については,保護観察を中止したり,終了させたりする措置をとることができるが,そのうち,件数の多い,保護観察処分少年に対する解除,少年院仮退院者に対する退院,保護観察付執行猶予者に対する仮解除の状況を示すと,III-91表のとおりであって,措置の人員,措置率ともに上昇している。

III-91表 成績良好者に対して保護観察所のとつた措置(昭和33〜37年)

 逆に,保護観察の成績が不良な者に対してとる措置としては,保護観察処分少年では家庭裁判所への通告,少年院仮退院者ではもどし収容,仮出獄者では仮出獄の取消や所在不明者についての保護観察の停止,保護観察付執行猶予者では執行猶予の取消のための検察官への申し出があり,その状況はIII-92表に示すとおりである。この表によると仮出獄の取消の申請,申報をのぞき,おおむね措置数,措置率ともに上昇しており,前記の成績良好者に対する措置の状況をもあわせ考えると,保護観察の実施が綿密になってきたことが推察される。このほかに,不定期刑仮出獄者の成績良好な場合の不定期刑終了の申請,婦人補導院仮退院者に対する退院および仮退院の取消等の措置があるが,該当ケースがごく少ないので省略する。

III-92表 成績不良者に対して保護観察所のとつた措置(昭和33〜37年)

 保護観察対象者の保護観察終了の状況は,III-93表のとおりである。これによれば,仮出獄者の成績は非常によいが,これは,保護観察期間の短いものが多いことと密接な関係があると思われる。保護観察付執行猶予者においては,取消率が漸減し,期間満了者が漸増しているが,これは,保護観察が漸次充実してきたことにもよるであろうが,一面には執行猶予の期間が長期(最高五年)であるため,この制度の初期には,無事,期間を満了する者が少なく,逆に取消によって終了する者が多いという一時的な現象でもあろう。しかし,昭和三七年度においても,全終了者中で執行猶予取消のケースの占める割合は三〇・七%にも達する。

III-93表 仮出獄者および保護観察付執行猶予者の保護観察終了人員とその終了事由別率(昭和33〜37年)

 なお,保護観察処分少年と少年院仮退院者の終了状況については第四編第二章で詳述する。
 暴力犯罪者の保護観察終了状況はIII-94表およびIII-95表のとおりであって,その他の犯罪者に比して,格別のちがいは見いだせない。これは,暴力犯罪における諸問題の中核をなす暴力組織関係者が,保護観察付執行猶予者においては比較的少数であり,また,とくに他の種類の保護観察に付された者に比して仮出獄者においては,保護観察の期間が短く,そのため取消処分をうける者が少なくなるからであろう。なお,仮出獄者中刑法犯の暴力関係犯罪をしたものに成績良のものの多いのは,強盗,殺人,傷害致死,強かんなどの犯罪のなかに犯行が偶発的であり,その後,行状をつつしんでいるものが少なくないからであろう。

III-94表 暴力関係犯罪とその他の犯罪別保護観察終了人員とその終了事由別率(昭和37年)

III-95表 暴力関係犯罪とその他の犯罪別保護観察期間満了人員とその期間満了時成績別率(昭和37年)