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 昭和39年版 犯罪白書 第三編/第四章/二 

二 保護観察の実施状況

 保護観察および環境の調査調整等の業務は,保護観察所長の指名する保護観察官が行なうことになっているが,通常は,保護司に委嘱して各種の措置がとられている。
 保護観察官は,全国保護観察所に六五九人配置され,保護観察活動,犯罪予防活動およびこれに関係のある業務にたずさわっているが,このほか地方委員会にも八七人配置され,おもに仮釈放審理関係事務に従事している。
 保護司は,法務大臣の委嘱する民間の協力者で,保護司法の規定によって全国九二七(昭和三七年一月改訂)の保護区(法務大臣が,都道府県の区域を分けて設けた区域)に,総数五二,五〇〇人配属されている。
 保護観察官は,いくつかの保護区を担当地域として受け持ち,保護司の協力をうけて,その地域に居住する対象者に対して保護観察を実施し,またその地域社会の犯罪予防活動に従事している。保護司は,平均一・八人程度の対象者を実際に担当し,指導監督と補導援護にあたっている。
 保護観察担当者は,適宜,対象者と接触を保ちつつ,たえず行状をは握して必要な措置をとるのであるが,その状況については少なくとも毎月一回,保護観察成績報告書で保護観察所長に報告することになっている。保護観察所長はこれにより対象者の状況を知り,成績のよい者については,適当な時期に保護観察の解除や停止等の措置をとり,また成績の悪い者については,呼出し,引致,さらに必要な場合には,仮出獄取消の申請,少年院へのもどし収容の申し出等の措置をとるのである。保護観察担当者と対象者との接触の状況は,法務省保護局が昭和三八年七月分の保護観察成績報告書について調査したところによると,III-81表のとおりで,対象者の約九三%が接触を保持している。

III-81表 保護観察対象者ひとりあたりの接触回数の率(昭和38年7月)

 すでに前節で指摘したように,最近対象者の数は減少の傾向にあるが,その都市偏在化の現象と,暴力犯罪者のような処遇困難な者が増加していることは,今後の保護観察実施上における大きな問題点で,前者については現在保護区における保護司定員数の改正が考慮されているが,後者については,その保護観察を担当する保護観察官と保護司が,暴力犯罪者の更生を図るのに必要な専門的な知識技術を十分身につける機会をもつ要があろう。