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 昭和39年版 犯罪白書 第三編/第一章/六/4 

4 暴力組織関係受刑者の処遇と問題点

 暴力組織受刑者は一般受刑者と同じく,所定の分類基準にしたがって,全国各刑務所に収容されているが,その収容状況を分類級別に示しているのがIII-55表である。これによると全体の六四・四%はB級刑務所(成人男子,性格準正常,改善困難な者を収容する)に収容されている。改善容易なA級刑務所収容者は八・九%にすぎない。二五才未満の青年または少年受刑者を収容しているD,E,G級刑務所にも,全体の一六・九%が収容されていることも注意されよう。

III-55表 罪種群別分顕級別

 刑務所内での暴力組織受刑者の問題行動を,一応反則という点からみると,III-56表に示すように,反則のある者が五二・九%と過半数を占めている。同表によって,さらにその反則内容を検討すると,殺人,傷害,暴行または職員抗命というような暴力的色彩の強い反則がかなり多くみられている。とくに,反則のある者の半数近くが殺人,傷害,暴行といった直接暴力行為に訴えていることは注意されなければならない。

III-56表 罪種群別所内反則およびその内容

 このように暴力組織受刑者は処遇上に多くの問題点をかかえていると思われるが,矯正施設職員の判定によって,その処遇の難易度をみると,III-57表に示すように,「ふつう」の判定が六八・三%,「困難」二六・二%,「著しく因難」五・一%となっている。これらの判定は個々の施設によっても条件の差があって,必ずしも一律に論ずることはできないであろうが,暴力組織受刑者の処遇上の問題を考察するために,いますこしく詳しくこの点について検討してみよう。

III-57表 罪種群別処遇難易

 まず罪種群別に処遇の難易をみると,III-57表にみるように,「困難」な者が多い罪種群は性暴力,生命暴力,財産暴力,粗暴暴力群などであって,これらの暴力犯罪をおかした暴力組織受刑者が処遇上も困難なグループであることが明らかである。このほか麻薬群にも処遇困難者がややみられている。
 次にIII-58表は処遇の難易を年齢別にみたものであるが,処遇の「困難」または「著しく困難」な者は二五〜二九才の年齢層に多い傾向がうかがわれる。

III-58表 年齢と処遇の難易

 入所度数についてみると,III-59表に示すように,初入者は明らかに処遇の難易が「ふつう」である者に多く,入所を重ねるにしたがって,処遇困難になって行く傾向が看取される。四入以上で処遇が「ふつう」である者が二二・八%であるのに対して,「困難」な者は三一・九%,「著しく困難」な者が三三・五%を占めていることが,この間の事情を物語っている。これに関連して,少年院経験の有無についてみると,処遇が「困難」または「著しく困難」とされている者のうちで,少年院経験のある者が四三・〇%を占めているのに対して,「ふつう」の者の六八・二%は少年院経験がないことになっている。

III-59表 入所度数と処遇の難易

 つぎに暴力組織内の地位と処遇難易をみるとIII-60表に示すように,幹部と組員の間に有意な差はみられない。したがって,以上のような事実から,矯正施設の現状において処遇が困難であるとされている暴力組織受刑者は,暴力的傾向のつよい犯罪をおかし,累犯性も高く,早くから少年院などの施設経験を経た者で,必ずしも暴力組織内での地位役割の高い者とは限られていないことが指摘されよう。しかし,かれらの出所後の見とおしについては,III-61表にみるように,幹部の五三・三%が出所後組織に帰ると考えられ,「組と縁を切る」と予測される者が一二・三%にすぎず,また組員の五四・四%が予測困難とされていることなどが,暴力組織受刑者の更生過程につながる問題として指摘されなければならないであろう。

III-60表 組織内の地位と処遇の難易

III-61表 出所後の見とおし