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 昭和39年版 犯罪白書 第二編/第一章/四 

四 被疑者の逮捕と勾留

 捜査は任意捜査を原則とし,強制捜査は法律のとくにさだめる場合にかぎって,例外的に行なわれる。強制捜査のうちで重要なのは,被疑者の身柄を拘束する逮捕と勾留である。
 昭和三七年の刑法犯と,道交違反を除く特別法犯との既済人員について,被疑者の逮捕と勾留等の状況をみると,II-3表のとおりである。まず,同年における検察庁の既済人員八五四,一七四人のうち,逮捕された者はその二四・一%にあたる二〇六,一四〇人で,逮捕されない者は七五・九%にあたる六四八,〇三四人である。すなわち,七割五分以上の者が逮捕されずに,在宅事件として処理されているのである。この逮捕された者のうち,逮捕後,警察で釈放された者は,二二,八七四人で,警察における逮捕者総数の一一・一%にあたり,のこる約八九%にあたる者は,逮捕のまま検察庁に送致されている。なお,検察庁ではじめて逮捕される者もあるが,その数はきわめて少なく,既済総人員の〇・二%にすぎない。

II-3表 刑法犯,特別法犯被疑者の逮捕,勾留別人員(昭和37年)

 検察官が,身柄を拘束された被疑者を受理したのちの身柄の取扱い方法は,勾留請求,逮捕中公判請求,家庭裁判所に送致,釈放などである。勾留の請求がなされると,裁判官によって勾留の必要がないと認められないかぎり,勾留状が発付されて勾留される。こうして勾留された者は一三四,三五〇人で,既済総人員の一五・七%にあたる。なお,勾留請求が却下された者は一,四五一人で,却下率は請求総数の一・〇%にあたる。次に,検察官が釈放した数は三〇,四九二人で,検察官が身柄事件として受理した事件のうちの一六・六%となる。百人のうちの一七人近くが,検察官の手もとで釈放されているわけである。
 そこで,勾留された者一三四,三五〇人が,その後どのような処分をうけたかを調べてみると,II-4表のとおりである。すなわち,検察官の起訴したものが六五・八%,起訴猶予が一七・六%,家庭裁判所送致が一二・九%,告訴取消,嫌疑なしなどの理由で不起訴となったものが三・四%,中止処分が〇・三%となっている。

II-4表 勾留被疑者の処分別人員(昭和37年)

 次に,勾留された被疑者が,どの程度の期間勾留されているかという勾留期間の問題であるが,これを五日ごとに区分して百分率をみると,II-5表のとおりである。勾留されたもののうち八〇・七%が,一〇日の勾留期間内に処理されており,刑事訴訟法の精神にそって,早期事件処理に努めている事情がうかがわれる。なお,この表で二〇日を越えるものが掲載されているが,これは同一被疑者が他の事件で引き続き勾留され,前の期間と合計して二〇日を越えることとなった例外的なものであって,その数は少なく,総数の〇・二%にすぎない。以上の統計は昭和三七年のものであるが,勾留期間については,毎年だいたいにおいて,大差のない比率を示している。

II-5表 被疑者勾留期間別人員(昭和37年)