この犯罪白書で取り扱う犯罪の概観は，主として昭和三七年におけるそれである。これは，犯罪統計，検察統計その他の関係統計資料のおもなものが，さしあたり同年の分までしか発表されていないため，統計を中心として犯罪現像をながめるかぎり，昭和三七年を中心としなければならなかったからである。しかしながら，事情が許すならば，なるべく新しい資料に基いて，最近における犯罪の傾向を解明することが望ましいことは，改めて申すまでもないところである。この意味において，この犯罪白書では，できるかぎり，昭和三八年以降の諸統計をも加えることに努めた。この点については，関係各庁の理解ある協力を得ることができたことを記しておかなければならない。
　さて，この犯罪白書では，最近大きな問題となっている暴力犯罪に焦点をあて，犯罪発生から検挙，捜査，検察，裁判，矯正，保護の各段階における暴力犯罪ないし暴力犯罪者の実態を明らかにすることに努めた。そこで，まず冒頭において，最近におけるわが国の犯罪の一般的傾向をながめ，これと対比して，最近における暴力犯罪の傾向にふれてみることにする。