前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成16年版 犯罪白書 第5編/第4章/第1節/2 

2 出所予定者に対する釈放前指導

(1)保護観察所が,受刑者の服役中から環境調整を実施する一方,行刑施設においては,出所を間近に控えた受刑者に対し,釈放前指導を行っている。釈放前指導は,釈放後の生活に対する受刑者の不安を解消するとともに,矯正処遇のいわば総仕上げとして,改善更生の意欲を確実なものとするため,釈放前の一定期間を社会復帰に向けた準備に充てようとするものである。
(2)釈放前指導の方法は,かつては各施設ごとの判断によっていたが,期間,内容等に関する基準を明確化するため,平成6年に訓令が定められ,現在は,これに従って運用されている。釈放前指導の期間は,仮出獄予定者が原則として2週間,満期釈放予定者が原則として1週間とされ,個々の受刑者にふさわしい内容と方法によって,計画的・組織的に行うこととされている。
(3)釈放前指導の期間中,仮出獄予定者は,一般に希望寮,静思寮,曙寮などと名付けられた半開放の建物又は区画に移される。これらの施設の内装は,刑務所というよりも一般住宅に近い仕様となっており,期間中,[1]一般社会にできる限り近づけた日常生活の体験,[2]釈放後の生活に直ちに必要となる知識の付与,[3]社会復帰後の就職に関する知識や情報の付与,[4]保護観察制度その他更生保護に関する知識の付与といった指導・援助が行われる。

釈放前指導寮

 釈放前指導の実施に当たっては,VTR教材,指導テキスト等が活用されるほか,公私の団体,民間篤志家等の協力・援助を得るよう努めることとされている。特に,施設内処遇と社会内処遇の円滑なバトンタッチを図るため,保護観察官や保護司が施設を訪れ,保護観察制度や更生緊急保護について講義を行ったり,あるいは逆に,仮出獄予定者が,行刑施設職員の引率の下,社会見学の一環として保護観察所や更生保護施設を訪問することが広く行われている。
『保護観察所による釈放前教育』
 保護観察所では,仮出獄の決まった受刑者の釈放前指導に積極的に協力しています。東京保護観察所では,保護観察官が講師となって,保護観察や更生緊急保護について講義を行った後,5名程度の少人数で質疑応答を行っています。「引受人とうまくいかなかったらどうしよう」,「被害者に謝りたいが,いつ,どのようにしたらよいのか」,「子供の将来を考えると,いずれ恩赦を希望したいが,どのような努力を積み重ねたらよいのか」。このような疑問や不安に対して保護観察官が相談に乗り,釈放を間近に控えた受刑者の社会復帰の意欲を支えています。