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 平成16年版 犯罪白書 第5編/第2章/第1節/3 

3 高度経済成長と行刑の発展(昭和30〜40年代)

 昭和20年代は,新憲法の下に,受刑者の改善更生・社会復帰のための行刑を目指した時代であったが,刑務所の現実は,戦後の混乱に伴う受刑者の急増,戦災・老朽化による施設の物的設備の脆弱さ,極端な物資不足などに悩まされ,集団逃走,騒じょう,暴動が頻発した時代でもあった。
 昭和30年代,40年代の高度経済成長期に入ると,治安情勢も徐々に安定し,行刑施設の過剰収容は解消され,施設内の規律秩序も回復していった。その間も「受刑者の改善更生・社会復帰のための矯正処遇」を目指す努力は続けられ,この時期に我が国の行刑は発展を遂げた。
 すなわち,分類処遇制度の推進と拡充を図るため,中野刑務所に分類調査の専門施設として分類センターが設置されたほか(昭和32年),理容や自動車整備等の各種資格を取得させることを目的とした新たな受刑者職業訓練規則(訓令)が制定された(31年)。職業訓練は,受刑者の勤労意欲を養うとともに,釈放後の就職に役立つよう,適格者を選別の上,刑務作業の一形態として実施されるものである。また,急増する交通事犯受刑者に対する新たな処遇方法として開放的処遇が実施されるようになり(36年),その後,これを専門的に行う施設として市原刑務所が新設された(44年)。開放的処遇もまた,個々の受刑者の特性に応じた処遇を行うことによって改善更生・社会復帰を促すという「処遇の個別化」の理念に立脚するものである。
 さらに,昭和47年には,23年の受刑者分類調査要綱を発展させた受刑者分類規程(訓令)が制定された。同規程は,分類処遇を通じて,受刑者の「改善及び社会復帰を促進することを目的」としており,それまでの収容分類級に加えて,処遇分類級という考え方を導入したほか,全国8ブロックの矯正管区ごとに分類センターを設置することなどを内容とするものであった。
 そのほか,この時代には,監獄法施行規則の改正を通じて,独居拘禁期間の短縮,交談禁止の緩和,居房内に畳を敷くことの禁止の解除,一般新聞紙の閲読禁止の解除,「丸刈り」以外の髪型の許可など,受刑者の生活面における処遇の改善も行われている(昭和41年)。