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 平成16年版 犯罪白書 第4編/第2章/第3節/3 

3 鑑別業務

 4-2-3-5図は,家庭裁判所で観護の措置(少年鑑別所送致)をとられた少年に対して行う鑑別(以下「収容鑑別」という。)の標準的な流れを示したものである。収容鑑別における調査は,面接,身体状況の調査,心理検査,精神医学的検査・診察,行動観察,及び関係機関,家族等外部からの資料の収集によって行われる。これらの調査の結果から得られた情報は,少年鑑別所長,鑑別担当者等で構成する判定会議において総合され,少年の資質の特質及びその問題点,並びに少年が非行にかかわることとなった要因及び再非行の危険性の程度が明確にされる。そして,改善更生のために最も適切な処遇方針等が鑑別判定意見として決定され,鑑別結果通知書として審判の前に家庭裁判所に提出される。

4-2-3-5図 少年鑑別所における収容鑑別対象少年の鑑別の流れ

 鑑別の結果は,他の記録とともに少年簿に記載され,保護処分の決定がなされた場合,少年院,保護観察所へ送付される。少年院送致の決定があった場合には,少年院において個人別に作成される個別的処遇計画の参考に供するため,処遇指針票が作成され,少年の身柄と共に送付される。
 4-2-3-6表は,平成15年における収容鑑別のうち,鑑別判定を終了した少年について,鑑別判定と審判決定等との関係を見たものである。保護観察を主とする在宅保護相当と鑑別判定された者では,83.7%が保護観察に,9.1%が決定保留のまま家庭裁判所調査官の試験観察にそれぞれ付されている。少年院送致相当と鑑別判定された者では,55.8%が少年院に送致されているが,25.3%が保護観察に,14.3%が試験観察にそれぞれ付されている。検察官送致を主とする保護不適と鑑別判定された者のうち,54.3%の者に検察官送致の決定がなされている。

4-2-3-6表 鑑別判定と審判決定等との関係

 少年鑑別所では,収容鑑別以外にも,以下の[1]ないし[3]の鑑別業務を実施している。
[1] 家庭裁判所からの依頼による在宅鑑別(以下「在宅鑑別」という。)
 少年を少年鑑別所に収容することなく実施する鑑別で,通常,家庭裁判所,少年鑑別所等に来所させて行う。面接及び心理検査を中心として行い,鑑別の結果は,収容鑑別と同様に,鑑別結果通知書として家庭裁判所に提出される。
[2] 法務省関係機関からの依頼による鑑別
・検察:主として捜査段階における少年に対する簡易鑑定
・矯正(行刑施設):主として懲役又は禁錮の言渡しを受けた16歳未満の少年に対する刑の執行に資するための資質鑑別
・矯正(少年院):主として処遇の過程において,問題等を改めて見直し,処遇計画の変更を考慮する必要がある少年に対する再鑑別
・保護(地方更生保護委員会・保護観察所):主として仮釈放の審理又は保護観察の実施のため必要がある少年に対する鑑別
[3] 一般少年鑑別
 一般市民,公私の団体等からの依頼を受けて行う鑑別で,主として社会一般の少年の教育,職業指導その他育成補導に関する方針の決定に資するために行われている。少年鑑別所は,こうした業務を通じて地域社会の青少年相談センターとしての役割を担い,広く一般市民の要望にこたえ,青少年の健全育成,非行防止等に寄与している。
 なお,平成15年における収容鑑別や前記各種鑑別の受付人員は,総数が5万4,693人であり,その内訳は,収容鑑別が2万3,549人,在宅鑑別が820人,法務省関係機関からの依頼による鑑別のうち,検察が8人,矯正(行刑施設及び少年院)が1,690人,保護が9,089人,また,一般少年鑑別が1万9,537人である(矯正統計年報による。)。

●観護の措置(P220)
 審判を行う必要があるときに,家庭裁判所が下す少年の身柄を保全するための措置です。家庭裁判所調査官の観護に付する場合と少年鑑別所に身柄を拘束する場合の2種類があり,後者については,身柄の保全と共に心身の鑑別を行うこととなっています。