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 平成16年版 犯罪白書 第1編/第2章/第5節/4 

4 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律

 平成15年7月16日,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成15年法律第110号)が公布された。同法律は,心神喪失又は心神耗弱の状態で重大な他害行為を行った者について,継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって,病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発防止を図り,本人の社会復帰を促進することを目的とするものである。
 同法律は,殺人,強盗,強姦,傷害,放火等の重大な罪に当たる行為を行った者が,[1]不起訴処分において心神喪失者若しくは心神耗弱者と認められた場合,又は[2]心神喪失を理由とする無罪の確定裁判若しくは心神耗弱を理由に刑を減軽する確定裁判(実刑判決の場合を除く。)を受けた場合,検察官の申立てにより,裁判官1人と精神保健審判員(精神科医)1人からなる地方裁判所の合議体が,処遇(入院治療又は通院治療)の要否・内容に関する審判を行い,両名の意見の一致により,これを決定することとしている。
 入院決定(医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定)を受けた者は,指定入院医療機関に入院して専門的な治療を受け,その間,保護観察所は,その者について,退院後の生活環境の調整を行う。また,通院決定(入院によらない医療を受けさせる旨の決定)を受けた者及び退院を許可された者は,原則として3年間,指定通院医療機関において通院治療を受けるとともに,保護観察所(社会復帰調整官)による精神保健観察に付される。
 同法律は,一部の規定を除き,公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされており,現在,施行に向けての準備が行われている。