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 平成16年版 犯罪白書 第1編/第1章/第4節/2 

2 薬物事犯の取締状況

(1) 覚せい剤等の押収

 1-1-4-9表は,最近15年間における覚せい剤等の押収量の推移を見たものである。覚せい剤等の押収量は,いわば氷山の一角であり,必ずしも実態を反映しているとはいえないが,薬物に対する需要の動向を示しているといえる。
 覚せい剤(粉末)の押収量は,平成10年までは数十キログラムないし数百キログラム程度の押収量で推移していたが,11年には約1,994kg,12年には約1,031kgと急増した。しかし,13年に約419kgと急激に減少し,以後微増しており,15年の押収量は約487kgであった。
 大麻の押収量は,平成13年に最近15年間で最高の約995kgを記録し,14年には約621kgと減少したが,15年は再び増加して約932kgとなった。
 近年は,MDMA等錠剤型合成麻薬の押収量が急増しており,平成15年における押収量は,前年の19万281錠から39万3,757錠となり,過去最高を記録した。

1-1-4-9表 覚せい剤・麻薬等の押収量

(2) 覚せい剤の仕出地

 1-1-4-10表は,最近15年間における覚せい剤の大量押収事犯(一度に1キログラム以上を押収した場合をいう。警察が押収したものに限る。)の仕出地を見たものである。平成5年から中国,9年からは北朝鮮を仕出地とするものが見られるようになり,これらに香港を加えたものが大量押収事犯の主たる仕出地であるが,15年にはフィリピン,カナダ及びマレーシアを仕出地とするものが見られるようになった。

1-1-4-10表 覚せい剤の大量押収事犯の仕出地

(3) 麻薬特例法の運用状況

 平成4年7月から麻薬特例法が施行されたが,同法律には,業として行う不法輸入等の処罰に関する規定,マネー・ローンダリングの処罰に関する規定,薬物犯罪収益の必要的没収・追徴規定,国際的なコントロールド・デリバリーを可能にする規定等が設けられている。
 1-1-4-11表は,平成6年以降に警察が検挙した麻薬特例法違反の事件数を見たものである。8年以降20件〜30件台で推移していたが,14年には43件と増加し,15年は44件となった。

1-1-4-11表 麻薬特例法違反事件数

 1-1-4-12表は,麻薬特例法の特色の一つである没収・追徴規定の通常第一審における適用状況を見たものである。合計金額は,平成9年に1億円を超え,13年には約37億8,700万円と過去最高を記録したが,15年は約15億7,800万円であった。

1-1-4-12表 麻薬特例法の没収・追徴規定の通常第一審における適用状況