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 平成15年版 犯罪白書 第5編/第3章/第2節/1 

第2節 若年犯罪者の変貌

1 犯罪者の年齢層別から見た動向(強盗における若年犯罪者の増加)

(1) 検挙人員から見た動向

 5―3―2―1図は,殺人・強盗の検挙人員の昭和48年から30年間にわたる年齢層別の推移を見たものである。
 まず,殺人について見ると,当初は20歳代,30歳代の若年・中年層が多かったが,20歳代は昭和50年代から,30歳代は昭和60年代から急激に減少し,40歳代は昭和60年代から漸減する一方で,50歳代,60歳以上の層(一般に高齢者とされる65歳以上の層も)は平成に入ってから漸増している。14歳から19歳までの犯罪少年の数は極めて少なく変化も見られない。

5―3―2―1図 年齢層別検挙人員の推移

 強盗の場合は,当初は20歳代が最も多かったが,昭和50年代に急激に減少し,それまで次位にあった犯罪少年(14歳から19歳まで)が代わって最も多い層となった。昭和55年以降,少年・20歳代・30歳代の若年・中年層を中心に減少ないし頭打ちの傾向も見られたが,その後,全年齢層とも増加傾向に転じ,特に平成8年以降は犯罪少年と20歳代といった若年層での増加傾向が著しく,犯罪少年では14年には7年の1.9倍(高校生の年代に対応する16,17歳の中間少年層においては2.0倍)に,20歳代では,1.9倍に増加した。

(2) 検挙人員人口比から見た動向

 年齢層の人口はその時代により変動があるため,各年齢層別の犯罪発生率の推移を正確に把握するには,各年における当該年齢層人口10万人当たりの検挙人員を見ることが必要となる。5―3―2―2図は,殺人及び強盗の各世代別人口10万人当たりの検挙人員を見たものである。
 殺人の場合,検挙人員で見たのと同様に,上位を占める20歳代は昭和50年以降,30歳代は60年代以降それぞれ激減し,平成元年以降はほぼ横ばい状態であるが,犯罪少年と50歳代,60歳以上の高年齢層はやや上昇傾向にある。
 少子化傾向により,犯罪少年に相当する少年人口(14歳〜19歳の人口)が減少しているにもかかわらず,犯罪少年検挙人員は減少せず横ばいであることから,人口比で見ると犯罪少年の実質的な増加傾向が若干ではあるが現れてきている(人口比で見ると14年が7年の0.2ポイント増となっている。)。
 また,高年齢層では,人口比で見た場合の上昇傾向が,検挙人員で見た場合ほど目立たない。社会全体に高齢化が進行して高年齢層の人口が急速に増大したことが,高年齢層の殺人検挙人員の増加の主たる要因であると推測される。

5―3―2―2図 年齢層別検挙人員人口比の推移

 強盗の場合は,人口比で見ると,若年者特に犯罪少年の上昇傾向が著しいことが浮き彫りとなる。少年全体では,昭和63年ころまでおおむね漸減していたが,その後上昇に転じ,平成8年以降急激な上昇を示し,14年は7年の10.6ポイント増の値を示すに至っており,少年の内訳を見ると,とりわけ16,17歳の中間少年層の上昇傾向が著しく,14年は7年の16.3ポイント増になっている。
 また,成人の中では,20歳代前半の層が平成8年以降上昇傾向を示し,14年には7年の4.7ポイント増の値を示しており,検挙人員と同様の増加傾向を示している。これに対して,50歳代,60歳以上の高年齢者層は微増傾向を示すにとどまり,検挙人員で見た場合の高年齢者層の顕著な増加傾向は主として高年齢者層の人口増大によるものであることが推測される。

(3) 世代間格差の推移

 殺人及び強盗並びに一般刑法犯の各検挙人員について,世代間格差の動向を見るために,年齢層別人口比の推移を年代別に示したものが,5―3―2―3図である。
 殺人では,昭和50年代初めには20歳代及び30歳代が突出して高い値を示していたが,その後60年代,更に平成へと時代が下るにつれて突出した世代がなくなり,平準化していることが分かる。すなわち,殺人に関しては世代間格差がなくなりつつあると言えよう。
 強盗では,従来から若年者層,特に少年が比較的多くやや高い値を示していたのであるが,平成9年以降に急激に少年層のみが突出して高い値を示すに至り,人口比で見ると世代間格差が一層拡大する傾向にあることが分かる。
 ちなみに,一般刑法犯で世代間格差の推移を見ると,平成4年から9年,14年と徐々に少年層のみが上昇して世代間格差が拡大する兆しは現れてはいるが,その動向は昭和52年から57年にかけての格差拡大と大差はなく,強盗のような大幅な変動ではない。強盗の世代間格差の動向は一般刑法犯全体の動向とは合致しない強盗独自の動きである。

5―3―2―3図 年代別検挙人員人口比の推移