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 平成15年版 犯罪白書 第4編/第2章/第6節/4 

4 各種の処遇施策

(1) 分類処遇制度

 分類処遇制度(第2編第5章第3節3参照)は,保護観察対象少年にも実施されている。4―2―6―6図は,分類処遇制度において,処遇困難と予測されるA分類の者の比率を,保護観察処分少年及び少年院仮退院者について見たものである。平成14年12月31日現在で,保護観察処分少年では5.8%,少年院仮退院者では23.9%の者がAに分類されている。少年院仮退院者でA分類の比率が高いのは,この種の対象者には更生上の問題が多いことを示している。A分類対象者に対しては,保護観察官が,本人に対する直接的な指導を強めるとともに,担当保護司との連絡・協議を密接に行うなどして,効果的な処遇に努めている。

4―2―6―6図 保護観察処分少年及び少年院仮退院者のA分類率の推移

(2) 類型別処遇制度

 分類処遇制度と同じく,類型別処遇(第2編第5章第3節3参照)も保護観察対象少年に実施されている。少年に関連する類型の種類には,シンナー等乱用,覚せい剤事犯,性犯罪,中学在学,無職等少年,暴走族等がある。4―2―6―7表は,保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,平成14年12月31日現在でこれらの類型に該当している者の比率を見たものである。両者とも,暴走族,次いでシンナー等乱用類型に該当する者の比率が高く,特に少年院仮退院者では,暴走族該当が30.6%,シンナー等乱用該当が18.2%に達している。保護観察所においては,各類型用の処遇手引きを作成し,保護観察官及び保護司がこれを活用しながら処遇に当たっているほか,庁によっては,シンナー,覚せい剤等薬物乱用類型に該当する者について,本人やその家族を対象として集団処遇を行うなどして,効果的な処遇に努めている。

4―2―6―7表 保護観察処分少年及び少年院仮退院者の類型別該当率

(3) 交通短期保護観察

 交通短期保護観察は,家庭裁判所で決定された保護観察処分として実施されるもので,交通関係の非行性が固定化していない少年に対して,保護観察官・保護司による個別指導に代えて,安全運転等に関する集団処遇を行うとともに,少年に生活状況を毎月書面で報告させ,車両の運転による再非行がなければ,原則として3月以上4月以内の短期間に保護観察を解除するものである。4―2―6―8表は,最近5年間の交通短期保護観察少年の新規受理・終了人員と集団処遇の実施状況を示したものである。

4―2―6―8表 交通短期保護観察少年の新規受理・終了人員及び集団処遇実施状況

(4) 短期保護観察

 短期保護観察は,交通関係業過や交通関係法令違反以外の非行により,家庭裁判所で保護観察処分に付された少年のうち,非行性の進度がそれほど深くなく,短期間の保護観察によって改善更生が期待できる者を対象としている。保護観察官・保護司による個別処遇によって行われるが,おおむね6月以上7月以内の短期間を実施期間とし,生活習慣,学校生活,就労関係,家族関係,友人関係等の領域から,少年の更生にとって特に重要な領域を選び,そこでの問題の改善を促進させるための課題を少年に履行させることを処遇の中心に置いている。

(5) 社会参加活動

 社会参加活動は,保護観察官・保護司による個別指導に加えて,保護観察対象者を老人ホーム等での介護補助や公園の清掃等の社会奉仕活動を始め,スポーツ,創作・体験活動等様々な活動に参加させ,社会性の発達を促そうとするものである。主に,保護観察処分少年を対象に実施され,短期保護観察少年に与える課題の一つとされることも多い。平成14年度においては,全国で513回(前年度506回)実施され,1,587人(同1,578人)の保護観察対象者が参加している(法務省保護局の資料による。)。