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 平成15年版 犯罪白書 第1編/第1章/第7節/1 

第7節 ハイテク犯罪

1 ハイテク犯罪の概況

 ハイテク犯罪とは,コンピュータ技術や電気通信技術を悪用した犯罪のことをいう。ハイテク犯罪は,[1]狭義のコンピュータ関連犯罪,[2]ネットワーク利用犯罪,[3]不正アクセス行為等の3種類に大別することができる。
 狭義のコンピュータ関連犯罪とは,コンピュータ又は電磁的記録を対象とする犯罪であり,電子計算機使用詐欺,電子計算機損壊等業務妨害,各種電磁的記録の不正作出・供用・毀棄等の罪が該当する。ネットワーク利用犯罪は,コンピュータ・ネットワークを利用して行われる犯罪であり,インターネットを利用した詐欺,違法な物品の売買,児童ポルノの販売・頒布等,多様な形態が含まれる。また,不正アクセス行為については,平成12年2月から不正アクセス禁止法が施行されており,ネットワークを通じて,他人のID・パスワードを勝手に使用したり,相手側システムの欠点をついて不正の情報・指令を与えるなどの方法により,利用の制限されている特定電子計算機を利用し得る状態にさせる行為などが処罰される。

(1) 検挙状況

 1―1―7―1図は,最近8年間におけるハイテク犯罪の検挙件数と,パソコン,インターネット及び携帯電話の世帯普及率を示したものである。インターネットの利用の広がりとともに,ネットワーク利用犯罪の検挙件数が急増していることが見て取れる。

1―1―7―1図 ハイテク犯罪の検挙件数及び情報通信機器の普及率の推移

 1―1―7―2表は,最近3年間に検挙されたハイテク犯罪の内訳を見たものである。ネットワーク利用犯罪について見ると,児童買春・児童ポルノ禁止法違反の増加が著しく,平成14年は408件で,ネットワーク利用犯罪の4割以上を占めている。その次に多いのがネットワークを利用した詐欺の112件であり,インターネット・オークションを利用したものが,そのうち60件を占めている。
 また,「その他」の168件の中には,覚せい剤取締法違反等の薬物事犯,銃刀法違反,売春防止法違反,商標法違反等,多様な罪名が含まれている(警察庁生活安全局の資料による。)。1―1―7―3表は,最近5年間に警察が押収したけん銃のうち,インターネットを利用して取引されたと認められたものの丁数を示したものであるが,コンピュータ・ネットワークが,性にかかわる犯罪や財産犯のみならず,治安に影響を及ぼすその他の犯罪にも悪用されていることを示している。
 また,不正アクセス禁止法違反について見ると,同法の施行された平成12年以来,検挙件数は31件,35件,51件と,少ないながらも年々増加している。不正アクセス行為は,高度情報通信社会の健全な発展の妨げとなるものであり,今後の動向が注目される。

1―1―7―2表 ハイテク犯罪の検挙件数

1―1―7―3表 インターネットを利用して取引されたけん銃の押収丁数

(2) 検察庁及び裁判所における処理状況

 1―1―7―4表[1]は,ハイテク犯罪のうち,罪種別の統計の存在するものについて,最近10年間における検察庁新規受理人員の推移を見たものである。また,これらの罪について,平成14年における検察庁終局処理人員を見ると,1―1―7―4表[2]のとおりである。処理人員が多い罪名(電磁的公正証書原本不実記録・供用,支払用カード電磁的記録関係,電子計算機使用詐欺,不正アクセス禁止法違反)について見ると,起訴率は70%前後であり,同年における一般刑法犯全体の起訴率(55.4%)よりも高くなっている。

1―1―7―4表 ハイテク犯罪の検察庁新規受理人員・終局処理人員の推移

 1―1―7―5表は,ハイテク犯罪のうち,罪種別の統計の存在するものについて,平成14年の通常第一審における懲役の科刑分布状況を見たものである。

1―1―7―5表 通常第一審におけるハイテク犯罪の懲役の科刑状況