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 平成14年版 犯罪白書 第5編/第2章/第4節/4 

4 再犯者の特性

 再犯者は,多様な概念であるが,本白書では,以前に罪を犯したとして検挙されたことがあり,再び検挙された者と定義することとする(なお,刑法第56条で定める再犯とは異なる。)。再犯者率とは,検挙人員に占める再犯者の比率を示す。また,前科者とは,過去に何らかの罪(道路交通法を除く)により,確定判決で刑(死刑,懲役,禁錮,罰金,拘留,科料)の言渡しを受けたことのある者をいい,前科者率とは,検挙人員に占める前科者の比率を示す。
 5-2-4-5図は,殺人及び暴力的9罪種について,前科者率及び再犯者率を見たものである。成人の再犯者率は,おおむね横ばい又は緩やかな低下の傾向にあり,平成13年には,強盗,脅迫,恐喝では60%を超え,強制わいせつでは40%弱となっている。成人と少年を比較すると,13年では,殺人,強盗,強姦及び強制わいせつでは少年再犯者率が高く,他の6罪種では成人再犯者率が高くなっている。成人の前科者率は再犯者率より,殺人を除いて,10%前後少なくなっている。この差は,以前に検挙された時点で未成年である等の理由から刑の言渡しを受けなかった者の比率を表している。

5-2-4-5図 成人前科者率,成人再犯者率及び少年再犯者率の推移

 5-2-4-6図[1]は,殺人及び暴力的9罪種の前科者率を示したものであり,比較のために一般刑法犯全体の前科者率も合わせて示している。強制わいせつを除き,すべての罪種の前科者率が,昭和49年以降の全期間を通じて,一般刑法犯の平均を上回っており,なかでも脅迫及び恐喝は全期間を通じて50%を超えている。

5-2-4-6図 前科者率,前科5犯以上の者の比率及び同種前科者率の推移

 5-2-4-6図[2]は,殺人及び暴力的9罪種の検挙人員に占める前科5犯以上の者の比率を示したものである。強姦及び強制わいせつを除くすべての罪種で,全期間を通じて,一般刑法犯の平均を上回っており,平成13年には,前科5犯以上の者がいずれも10%以上を占める。このことから,これらの罪種では,犯罪傾向の進んだ者による犯行が多いことがうかがわれる。
 5-2-4-6図[3]は,殺人及び暴力的9罪種の同種前科者率(検挙人員に占める,同一罪種の前科を有する者の比率)を示したものである。同種前科者率の高い罪種は,傷害,暴行,脅迫,恐喝及び住居侵入であるが,このうち住居侵入を除く4罪種の同種前科者率は低下傾向にある。しかし平成13年においても傷害及び恐喝については,20%前後と一般刑法犯の平均を上回っている。相対的に前科者率,前科5犯以上の者の比率が高く,一方,同種前科者率が低い罪種が多いことから,これらの犯罪を行う者は同一罪種のみならず,他の罪種の犯罪をも重ねてきた者が多いことがうかがわれる。
 なお,ここでは検挙段階における再犯者の特性を見てきたが,矯正施設における再入受刑者については,第5編第4章第1節を参照されたい。