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 平成14年版 犯罪白書 第5編/第2章/第3節/4 

4 強盗の手口別推移

 暴力的色彩の強い犯罪の中でも,日常生活の中で生起しうる犯罪でありながら被害が重大な犯罪としての強盗に焦点を当てて検討する。5-2-3-4図は,強盗を侵入強盗と非侵入強盗に分けて,認知件数,検挙件数及び少年比ごとに各犯行手口の推移を見たものである。なお,本項における強盗の手口名は,いずれも警察庁の統計による。

5-2-3-4図 強盗の手口別認知件数・検挙件数・少年比の推移

 侵入強盗の手口では,「上がり込み」が急増している。「上がり込み」とは,昼間又は夜間就寝前に屋内に侵入し,金品を強奪する手口をいう。「上がり込み」と並んで増加している強盗事犯は,「金融機関強盗」であり,これまで年間100件ないし150件前後で推移してきたものが,平成13年には229件に急増した(第1編1章1節の1-1-1-12図参照)。特に,郵便局を狙った強盗は,12年までは100件未満で推移していたが,13年には152件と急増した。また,警察庁は,いわゆるコンビニ強盗の続発に留意して,独自に「深夜スーパーマーケットを対象とした強盗」として統計調査を実施しているが,このコンビニ強盗も,10年以降の増加が著しい(第1編1章1節の1-1-1-13図参照)。
 侵入強盗に関しては,[1]民家や商店・事務所に侵入する「上がり込み」が急増していること,[2]コンビニエンスストアのような係員が少人数で比較的犯行が遂行しやすい場所における強盗が急増していることが指摘される。これらは,さしたる下見や準備も要せず手っ取り早く敢行できる手口である上,追跡者が少ないため逃走が容易であると考えられる手口であり,模倣性も極めて高い犯行である。
 次に,非侵入強盗の手口を見ると,「路上強盗」の急増が著しく,最近の10年間で約4.5倍に増加している。殊にこの2,3年は,成人による路上強盗の増加が注目される。「路上強盗」とは,路上等で通行人等から金品を強奪する手口をいい(警察庁の統計による。),これが,強盗の犯行場所における屋外比の比率を押し上げている主な要因と認められる。なお,金融機関などを狙った強盗であっても,現金等を輸送中の銀行員等から現金を強奪する,銀行や郵便局等へ預金に行く者や払い戻しを受けた者から現金等を強奪する等の手口は,金融機関強盗や路上強盗とは別に,「途中強盗」として非侵入強盗に計上されている。
 侵入強盗・非侵入強盗など手口別に少年比を見ると,侵入強盗では,「上がり込み」,「押入り(夜間就寝中に屋内に侵入し,金品を強奪するもの)」及び「居直り」が,ほぼ同様の推移を示しており,ここ2,3年は,ほぼ10%前後で推移している。また,非侵入強盗の少年比では,起伏を繰り返しながらも路上強盗の70%前後を少年が占めているのが注目される。
 なお,路上強盗に迫る勢いで「おびき出し」の少年比がこの数年間上昇していることが路上強盗同様に注目されるところである。