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 平成14年版 犯罪白書 第3編/第2章/第1節/(3) 

(3) 不起訴処分に対する救済制度

 我が国では国家訴追主義が採られており,公訴権は,原則として,検察官のみに付与されており,また,検察官には公訴の提起について広い裁量権がある。しかし,検察官が判断を誤り,起訴すべき事件を起訴しないという可能性もあり得ることから,告訴人・被害者等に,検察官の公訴を提起しない処分(不起訴処分)に対する救済の制度が法律上整備されている。これが,検察審査会に対する審査申立て及び管轄地方裁判所に対する付審判請求(準起訴手続ともいう。)である。
 検察審査会に対する審査申立ての制度は,検察審査会法(昭和23年法律第147号)に基づくものであるが,同法は,日本国憲法の精神にかんがみ,公訴権の行使に関しても,できる限り民意を反映させ,その適正を図るという趣旨から,昭和23年7月,刑事訴訟法と同時期に公布された(同月12日施行)。また,付審判請求とは,公務員による各種の職権濫用の罪について告訴又は告発をした者が,検察官の公訴を提起しない処分に不服があるとき,事件を裁判所の審判に付するよう管轄地方裁判所に請求することを認める制度であり,この請求を受けた地方裁判所は,請求に理由があるときは,事件を裁判所の審判に付する旨の決定を行う。この決定により,その事件について公訴の提起があったものとみなされ,裁判所は公訴の維持にあたる者を弁護士の中から指定し,検察官の職務を行わせる。
 なお,法律上の救済制度ではないが,検察官が行った不起訴処分については,実務上,上級検察庁の長に対し不服を申し立てて監督権の発動を促すことがあり,上級検察庁がこれを受理した場合には,処分を再検討し,処理結果を不服申立人に通知している。