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 平成14年版 犯罪白書 第1編/第1章/第6節/1 

第6節 選挙犯罪

1 選挙犯罪の動向

 1-1-6-1図は,最近10年間における公職選挙法違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。

1-1-6-1図 公職選挙法違反の検察庁新規受理人員の推移

 公職選挙法違反は,各年における選挙の有無や種類等によって受理人員に大きな変動があり,平成5年,7年及び11年の各受理人員が突出しているのは,5年7月に衆議院議員総選挙が,7年4月及び11年4月に統一地方選挙が,それぞれ行われたことによる。6月に総選挙が行われた12年の受理人員は2,200人で,前回の総選挙が行われた8年の3,190人を下回っている。13年については7月に参議院議員通常選挙が行われたが,同年の受理人員は2,259人である。
 警察庁の統計によって,平成13年の公職選挙法違反につき,違反態様別に送致人員の多いものから順に見ると,買収・利害誘導が圧倒的に多く,次いで文書図画に関する制限違反,公務員等の選挙運動等の制限違反となっている。
 買収・利害誘導は,選挙の公正を害する度合いが極めて強いことから,公職選挙法上も順次その規制が強化されている。公職選挙法は,昭和25年の施行以後,57年には参議院議員の選挙について,平成6年には衆議院議員の選挙について,それぞれ比例代表選出制度が導入されるなど,大きな制度的変更が加えられたほか,買収・利害誘導に対する規制としても,昭和29年,37年,50年,56年及び平成6年には連座制の強化が,昭和50年と平成6年には罰金刑の上限額の引上げ等がそれぞれ行われている。
 1-1-6-2図は,前記の法改正の時期を示しながら,公職選挙法が施行されてから平成13年までに行われた全国規模の選挙(衆議院議員総選挙,参議院議員通常選挙及び統一地方選挙)について,選挙の種類別に,投票日後3か月又は90日の時点での当該選挙における買収・利害誘導による送致人員の推移を見たものである。

1-1-6-2図 全国的規模の選挙における買収・利害誘導による送致人員の推移と公職選挙法の改正

 いずれの選挙においても,買収・利害誘導による送致人員数は,昭和40年代以降顕著に減少しているところ,衆議院議員総選挙及び参議院議員通常選挙については,その後も短期的には増減を繰り返していたが,平成6年12月に,衆議院議員の選挙における比例代表選出制度の導入,連座制の強化及び罰金刑の上限額の引上げを内容とする公職選挙法の一部改正がなされた後においては,買収・利害誘導による送致人員は減少を続けている。ただし,13年の参議院議員通常選挙における買収・利害誘導による送致人員は,7年及び10年の参議院議員通常選挙における買収・利害誘導による送致人員を上回った。