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 平成13年版 犯罪白書 第4編/第2章/第2節/2 

2 検察庁における窃盗の処理状況

 窃盗は,基本的には被害者の身体等に対する直接の攻撃を伴わない犯罪であるから,その処分を決するにあたっては,財産犯一般と比しても,被害額が大きな意味を持つことになる。被害額の伸びは,昭和期においては消費者物価の伸びを下回っていたが,平成期に入り,消費者物価の伸びが頭打ちになると,逆に被害額は伸び率を高くするようになり,被害額の伸び率が消費者物価を上回る年も生じるなど,大型被害の事案が散発していることもうかがえる。特に過去5年間を見ると,当初の3年間では,1件当たりの被害額,昭和49年を100とする被害額指数,被害額50万円以上の事件の比率が,いずれも減少又はおおむね安定していたが,平成11年以降,消費者物価指数が連続して減少する中,いずれも急激な増加に転じており,被害額1,000万円以上の事件の認知件数に至っては,平成9年以降の増加が顕著であり,12年の認知件数(1,641件)が,8年のほぼ2倍になっている(巻末資料IV-9参照)。
 IV-19図は,全期間における窃盗の起訴人員と起訴猶予人員の推移を見たものである(巻末資料IV-11参照)。

IV-19図 窃盗の起訴人員・起訴猶予人員の推移

 全期間を通じて,起訴率は上昇傾向,起訴猶予率は低下傾向にあるが,やや特異な数値を示している昭和49年を除けば,こうした公訴権の行使が積極化する傾向は,昭和期よりも,平成期における方が強く見られ,特に平成10年と11年は,そうした傾向が更に強まっている。
 窃盗についての公訴権行使の積極化傾向は,昭和49年以前から継続しているものともいえるが,それまで上昇傾向にあった前科者率が平成期に入って低下してきているにもかかわらず,前記のとおり,平成期においてさらに公訴権行使の積極化傾向が強まっているということは,初犯者に対しても,より積極的に公訴権を行使しているものとして,検察の姿勢が変化してきているものと見ることもできるであろう。また,この変化については,窃盗が,認知件数において増加の度合いを,検挙率において低下の度合いを強めており,認知件数1件当たりの被害額も増加の度合いを強めているという状況の下においては,一罰百戒という一般予防の見地からも理解できることである。