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 平成13年版 犯罪白書 第1編/第1章/第3節/1 

第3節 財政経済犯罪

1 脱税事犯

(1) 検察庁における受理状況等

 I-11図は,最近10年間における所得税法違反,相続税法違反,法人税法違反及び消費税法違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。

I-11図 所得税法違反・相続税法違反・法人税法違反・消費税法違反の検察庁新規受理人員の推移

 I-9表は,最近5年間の各会計年度に,国税庁から検察庁に告発された所得税法違反,相続税法違反,法人税法違反及び消費税法違反事件について,告発件数及び1件当たりの脱税額の推移を見たものである。平成12年(会計年度)においては,告発件数は合計146件で,1件当たりの平均脱税額(加算税額を含む。以下同じ。)を前年度と比較すると,所得税法違反では23.4%減,相続税法違反では15.3%減,法人税法違反では6.9%減となっている。なお,脱税額が3億円以上の事件は22件,5億円以上の事件は5件となっている(国税庁の資料による。)。

I-9表 所得税法・相続税法・法人税法及び消費税法違反事件の告発件数並びに1件当たりの脱税額

 平成12年(会計年度)の告発件数を業種別に見ると,小売業が最も多く,25件(17.1%)であり,製造業及び卸売業が,それぞれ15件(10.3%)でこれに続いている。また,脱税の手段・方法については,売上げ除外(売上げの一部を帳簿に記載しないなどの方法で収入の一部を隠すこと)や架空経費の計上(空伝票を使うなどして実際以上に経費がかかったことにして見かけ上の所得を少なくすること)が主となっている。脱税によって得た利益の留保形態(隠匿財産として密かに隠し持つ方法)は,大半が預貯金,割引債券,不動産及び現金である(国税庁の資料による。)。

(2) 検察庁における処理状況

 I-10表は,最近5年間の検察庁における所得税法違反,相続税法違反,法人税法違反及び消費税法違反の起訴・不起訴人員の推移を見たものである。起訴率は,おおむね80%台以上で推移しており,平成12年においては,起訴されたものは,すべて公判請求(裁判所に正式な裁判を行うことを求めるもの)となっており,略式命令請求(書類審査による罰金刑の支払い命令を裁判所に求めるもの)となったものはない。

I-10表 所得税法違反・相続税法違反・法人税法違反・消費税法違反の起訴・不起訴人員

(3) 裁判所における処理状況

 司法統計年報及び最高裁判所事務総局の資料によれば,平成12年の通常第一審における終局処理人員は,所得税法違反49人(有期懲役42人,罰金5人,公訴棄却1人及び無罪1人),相続税法違反10人(すべて有期懲役),法人税法違反170人(有期懲役74人,罰金91人,公訴棄却5人)及び消費税法違反がなし,となっている(8年から12年までの通常第一審において懲役の言渡しを受けた者の科刑状況については,巻末資料I-5参照)。