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 平成12年版 犯罪白書 第7編/第5章/第4節 

第4節 暴力団への帰属意識等

 VII-13表は,暴力団関係受刑者(幹部380人,組員274人)に対する「組に加入して良かったと思いますか」との質問についての回答結果を,所属していた暴力団での地位別に示したものである。

VII-13表 暴力団加入に対する意識(所属暴力団での地位別)

 全体で見ると,「良かったと思う」と答えた者の比率は24.4%,「良かったとは思わない」と答えた者の比率は35.3%である。幹部と組員の回答状況に顕著な差は見られない。
 VII-14表は,暴力団関係受刑者に対する「組に入ったことの魅力・メリット・得たものはどんなことでしたか」との質問について,重複選択で回答を求めた結果を,所属していた暴力団での地位別に示したものである。

VII-14表 暴力団加入の魅力・メリット(所属暴力団での地位別)

 暴力団関係受刑者全体では,「組の名前で仕事がしやすい」と回答した者が35.2%と最も多く,「仲間が増える」(25.9%),「刺激にあふれている」(25.9%)が,これに次いで多くなっている。
 また,幹部と組員との間のポイント差が大きいものを見てみると,「面倒を見てもらえる」,「金に困らない」及び「格好がいい」で,それぞれ13.1ポイント,6.6ポイント,5.5ポイント,組員が幹部を上回っている。逆に,「出世できる」及び「世間の役に立っている」は,それぞれ,10.9ポイント,6.5ポイント,幹部の方が組員を上回っている。
 なお,幹部,組員とも,「特にない」と答えた者の比率が約30%に達している。
 VII-15表は,暴力団関係受刑者に対する「組に入ったことの不利益・デメリット・失ったものはどんなことでしたか」との質問について,重複選択で回答を求めた結果を,所属していた暴力団での地位別に示したものである。

VII-15表 暴力団加入の不利益・デメリット(所属暴力団での地位別)

 暴力団関係受刑者全体では,「家族に迷惑をかける」(68.3%)が最も多く,次いで,「警察ににらまれる」(62.9%),「両親に迷惑をかける」(55.5%)等となっている。
 また,幹部と組員との間のポイント差が大きいものを見てみると,「警察ににらまれる」で,約10ポイント,幹部が組員を上回っており,反対に,「思ったよりも経済的に苦しい」,「かた苦しい」で,それぞれ約7ポイント,組員が幹部を上回っている。
 VII-16表は,暴力団関係受刑者に対する「組に入ったことの魅力・メリット・得たものはどんなことでしたか」との質問について,重複選択で回答を求めた結果を,「組に加入して良かったと思いますか」との質問に対する回答結果別に示したものであり,VII-17表は,同様に,「組に入ったことの不利益・デメリット・失ったものはどんなことでしたか」との質問について,重複選択で回答を求めた結果を,「組に加入して良かったと思いますか」との質問に対する回答結果別に,示したものである。

VII-16表 暴力団加入の魅力・メリット(暴力団加入に対する意識別)

VII-17表 暴力団加入の不利益・デメリット(暴力団加入に対する意識別)

 メリットについては,「良かったと思う」とする者が,「組の名前で仕事がしやすい」(40.4%),「刺激にあふれている」(36.2%),「出世できる」(34.8%)の順,「良かったとは思わない」及び「良かったかどうかは分からない」とする者では,「組の名前で仕事がしやすい」(32.8%,31.8%),「仲間が増える」(21.7%,24.7%),「刺激にあふれている」(18.0%,24.7%)の順となっている。
 一方,デメリットについては,「良かったと思う」とする者では,「警察ににらまれる」(55.0%),「家族に迷惑をかける」(53.6%),「両親に迷惑をかける」(45.7%)の順,「良かったとは思わない」とする者では,「家族に迷惑をかける」(79.5%),「警察ににらまれる」(67.6%),「両親に迷惑をかける」(66.7%)の順,「良かったかどうかは分からない」とする者では,「家族に迷惑をかける」(65.7%),「警察ににらまれる」(60.4%),「両親に迷惑をかける」(50.6%)の順となっている。
 VII-18表は,暴力団関係受刑者に対する「本件犯行時までに組を離脱しなかった理由は何だと思いますか」との質問について,重複選択で回答を求めた結果を,所属していた暴力団での地位別に示したものである。

VII-18表 暴力団を離脱しなかった理由(所属暴力団での地位別)

 総数で見ると,暴力団を離脱しなかった理由として最も多く認識されているのは,「組に義理があったから」(43.4%)であり,次いで,「親分兄弟分との関係が切れなかったから」(41.9%),「組員としての生活に満足していたから」(33.3%),「他の手段で生活できなかったから」(28.5%)の順となっている。
 地位別に見ると,幹部は,「親分兄弟分との関係が切れなかったから」(43.9%),「組に義理があったから」(41.4%),「組員としての生活に満足していたから」(35.4%)の順,組員では,「組に義理があったから」(46.3%),「親分兄弟分との関係が切れなかったから」(38.8%),「組員としての生活に満足していたから」(30.2%)の順に,それぞれなっている。