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 平成12年版 犯罪白書 第6編/第6章/3 

3 海外法制

 海外諸国においても,我が国の経済犯罪に相応する事案に対して,種々の取組が行われており,その中には,共通する特徴として類型化できるものが認められる。
 その一は,企業に対する経済的制裁の強化である。アメリカにおいては,組織体に対する量刑ガイドラインが,企業に対して,極めて高額な罰金刑の量刑を制度化しており,ドイツにおいても,企業に対する過料の額は相当高額に定められている。また,フランスも,法人に対する罰金刑の上限を自然人に対する罰金刑の上限の5倍としている。これらに加え,アメリカや韓国における罰金刑,イギリス及びフランスにおける独占禁止法違反に対する制裁金,ドイツにおける秩序違反法に基づく過料,フランスにおける証券取引法違反に対する制裁金等のように,金銭的制裁の上限額を犯罪による利得額等と連動させ,実質的に重い経済的制裁を加えている例も多い。
 その二は,犯罪の予防や検挙に協力した者に対する制裁の減免措置である。アメリカでは,コンプライアンス・プログラムの存在が,刑の減軽事由になり得るものとされるほか,アメリカやドイツの独占禁止法の運用面においては,捜査への協力と免責とが実質的に結びつけられている。さらに,イギリス及び韓国においては,独占禁止法違反に関する違反行為者からの情報提供が,制裁についての減免事由になり得ることが明記されている。
 その三は,違反者の処罰以外の組織規定その他の制度面における施策である。イギリスにおいては,外部の専門家と共同して,重大かつ複雑な経済事件に対する捜査及び訴追を一貫して行う機関として重大経済犯罪庁が設置されており,韓国においては,金融実名取引制度を設け,過料による制裁に税制をも連動させて,経済犯罪を含む各種犯罪の温床にもなる仮名口座の一掃を図っている。
 こうした海外諸国の制度については,今後の施策及び運用の実態にも注意を払うべきものと思われる。