前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成12年版 犯罪白書 第5編/第2章/第1節/6 

6 被害者に対する情報提供

 刑事事件の公判期日における審理は公開の法廷で行われ,被害者は,これを傍聴することができるほか,事件処理結果等が被害者に通知されることや,刑事確定訴訟記録が公開されていることなどにより,被害者に対する情報提供が行われている。

(1) 告訴人通知及び被害者等通知制度

 検察官は,告訴のあった事件について,公訴を提起し,又はこれを提起しない処分(不起訴処分)をしたときは,速やかにその旨を告訴人に通知しなければならず,不起訴処分をした場合において,告訴人の請求があるときは,速やかにその理由を告げなければならないとされている。
 さらに,被害者等の一定の者に対し,事件の処理結果や裁判結果等を通知する被害者通知制度が,平成3年以降各地の検察庁に導入されるようになり,11年4月からは,全国的に統一された被害者等通知制度が実施されるに至っている。同制度では,被害者が死亡した事件又はこれに準ずる重大な事件や検察官等が被害者等の取調べ等を実施した事件において,被害者等に対して通知の希望の有無を確認し,被害者等が通知を希望する場合,あるいは被害者等から照会があった場合等に通知を行うものとされている。通知の内容は,事件処理結果,公判期日及び判決結果等であり,被害者等が希望する場合には,公訴事実の要旨,不起訴理由の骨子,公判経過等を通知することができる。
 警察においても,平成8年7月から,殺人事件等の被害者等に対し,捜査状況等を連絡する「被害者連絡制度」が実施されている。なお,11年3月,家庭裁判所が,犯罪少年に係る事件を終局させる決定をした場合において,被害者等から申出があるときは,少年の健全な育成を妨げるおそれがあり相当でない場合を除いて,少年及びその法定代理人の氏名及び住居,決定の内容等を通知することとする「少年法等の一部を改正する法律案」が国会に提出され,継続審査となっていたが,12年6月の衆議院の解散により廃案となった。

(2) 刑事事件記録の閲覧等

 刑事確定訴訟記録については,原則として閲覧することができるとされているが,これに加え,裁判確定前の訴訟記録について,前記「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」により,刑事被告事件の係属する裁判所は,第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において,被害者等から当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があり,正当な理由があって相当と認める場合には,申出をした者に閲覧又は謄写をさせることができるものとされた。
 一方,不起訴記録については原則として非公開とされているが,公益上の必要その他の事由があって,相当と認められる場合に開示し得る旨が定められており,近時,被害者の問題に対する社会的関心が高まり,被害者に対する配慮とその保護のために諸方策を講じることが重要な課題となっていることにかんがみ,法務省において,被害者等に対する不起訴記録の開示について,新たな方針が策定された。それによって,被害者等が民事訴訟において被害回復のため損害賠償請求権その他の権利を行使するために必要と認められる場合には,関連事件の捜査又は公判の運営への支障や関係者のプライバシーの侵害等を生じない範囲内で,実況見分調書,写真撮影報告書,検視調書等の客観的証拠で,代替性がないと認められる証拠の閲覧又は謄写に応じることとされている。