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 平成12年版 犯罪白書 第5編/第2章/第1節 

第2章 刑事司法における被害者への配慮

第1節 刑事手続と被害者

 犯罪により害を被った者,すなわち被害者には,犯人の処罰を求めて告訴を行う権利等が認められているほか,検察庁の不起訴処分に対する救済制度も設けられている。また,被害者の被害・処罰感情が,起訴便宜主義の下での訴追の要否の判断や裁判における量刑に当たって考慮されるなど,運用の面でも,被害者の立場・心情が配慮されている。さらに,加害者に賠償能力がないことなどから,被害者等が加害者から損害のてん補を受けられない場合に,所定の範囲内で国が直接被害者の救済に当たる制度等も設けられている(本章第3節参照)。
 これらに加え,被害者等に対するより適切な配慮と一層の保護を図るため,平成12年5月,刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律(平成12年法律第74号)及び犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(平成12年法律第75号)が公布された。前者は,被害者等が証人として尋問される際の負担を軽減すること,親告罪である強姦罪等の告訴期間を撤廃すること,公判手続における被害者等による心情その他の意見の陳述の制度を導入すること及び検察審査会に対する審査申立権者の範囲を拡大することなどを内容としており,後者は,被害者等が公判手続を傍聴できるよう裁判長が配慮すべきこと,被害者等に対して裁判所が係属中の事件の公判記録を閲覧又は謄写させることができること及び被告人と被害者等の間の民事上の争いについて成立した合意が刑事被告事件の公判調書に記載された場合にその記載が裁判上の和解と同一の効力を有することなどを内容としている。
 これらの法律によるものを含め,刑事手続において被害者の意思がどのように反映され,その地位・立場がどのように保護されるかなどについて概観する。