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 平成12年版 犯罪白書 第3編/第2章/第4節/1 

第4節 少年院における処遇

1 概説

 家庭裁判所の審判の結果,保護処分の一つである少年院送致の決定を受けた者を収容する少年院は,平成12年4月1日現在,全国に本院52庁,分院1庁が設置されている。
 法律上,少年院に収容することができる期間は,原則として20歳に達するまでとなっており,少年院送致決定から20歳に達するまでの期間が1年に満たない場合には,少年院長は,送致から1年間に限り収容を継続することができることとなっている。
 少年院には,収容少年の年齢,犯罪傾向の程度及び心身の状況に応じて,[1]初等(対象は心身に著しい故障のない,14歳以上おおむね16歳未満の者),[2]中等(対象は心身に著しい故障のない,おおむね16歳以上20歳未満の者),[3]特別(対象は心身に著しい故障はないが,犯罪的傾向の進んだ,おおむね16歳以上23歳未満の者),[4]医療(対象は心身に著しい故障のある,14歳以上26歳未満の者)の4種類があり,医療少年院を除き,男女の別に従って設けられている。
 少年が収容される少年院の種別は,家庭裁判所の審判において決定されるが,初等少年院送致又は中等少年院送致決定の際,短期処遇(一般短期処遇又は特修短期処遇)が適当である旨の処遇勧告がなされる場合があり,少年院も,短期処遇を実施する少年院と長期処遇を実施する少年院とに区分されている。
 短期処遇は,非行の傾向はある程度進んでいるが,少年の持つ問題性が単純又は比較的軽く,早期改善の可能性が大きいため,短期間の継続的・集中的な指導と訓練により,その矯正と社会復帰を期待できる者を対象とし,開放的な雰囲気の中で処遇を行っている。短期処遇は,運用上,収容期間を6か月以内とする一般短期処遇と,非行の傾向が一般短期処遇の対象者より進んでいない者を対象とし,収容期間を4か月以内とする特修短期処遇の二つに区分される。
 長期処遇は,短期処遇になじまない者を対象としている。
 平成9年9月には,最近の少年非行の質的な凶悪化,少年の問題性の一層の複雑・多様化に,少年院がより柔軟に対応する体制を整備するとの観点から,長期処遇において運用基準の見直し等が行われた。その結果,非行の重大性等により,少年の問題性が極めて複雑・深刻であるため,その矯正と社会復帰を図る上で特別の処遇を必要とする者を対象とし,収容期間を原則として2年を超える期間とする処遇課程(G3)が新設された。また,その他の少年の収容期間については,運用上2年以内とされていたが,少年の必要性に応じ,これを超えて処遇する必要がある場合は,所定の手続を経て,少年院長が収容期間を定めることとするなど,処遇の個別化の一層の徹底が図られることとなった。 これら少年院の分類処遇制度を示したものがIII-39図である。

III-39図 少年院分類処遇制度

 審判により少年院送致決定がなされた後,少年鑑別所は,これを受けて,対象者の特質及び教育の必要性に応じ,各少年院で実施されている処遇課程等を考慮し,収容すべき少年院を指定することになっている。
 少年院においては,少年非行の多様化・複雑化の傾向に対処するため,保護観察所等の関係諸機関との緊密な連絡協調の下に,個々の少年の特質や問題を考慮し,その教育上の必要性に対応すべく,処遇の個別化を図っている。
 少年院長は,少年に対する矯正の目的を達したと認める場合には退院の申請を,少年が処遇の最高段階に向上し,仮に退院を許すのが相当と認める場合には仮退院の申請を,それぞれ地方更生保護委員会に対して行わなければならないこととなっている。