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 平成11年版 犯罪白書 第5編/第7章/第8節/1 

1 犯罪被害者施策の沿革

 オーストラリアでは,1967年にニュー・サウス・ウェールズ州が最初に犯罪被害者補償制度を導入し,ビクトリア州は1972年犯罪被害者補償法(Criminal Injuries Compensation Act1972)によってこの制度を導入した。その後,ビクトリア州の犯罪被害者補償法は,1983年に全面改正され,更に1988年に部分改正された。ビクトリア州で,経済的支援以外の犯罪被害者援護が本格的に始まったのは,1990年代に入ってからであり,その中で特に重要な役割を果たしたのが,ビクトリア州暴力対策地域評議会(Victorian Community Council Against Violence)である。この評議会は,刑事司法機関からは独立した政府機関であり,暴力対策に関する調査等を実施して各機関に対して勧告を行う立場にあるが,1994年に,犯罪被害者援護に関する各関係機関の取組を調査し,その結果,被害者のニーズに基づいた,より統合的な援護策の必要性を勧告した。この勧告によって改めて被害者の権利が確認され,また,これと同時に,犯罪被害者援護関係機関による会議等が開かれ,経済中心の支援から,被害者の真の立ち直りを助けるための,より多様化され,かつ有機的に統合された被害者支援への転換が打ち出された。そして,従来の犯罪猿害者補償制度を改革し,精神的な被害に対するカウンセリング等のより広範囲な支援(assistance)を含む補償を盛り込んだ1996年犯罪被害者支援法(Victims of Crime Assistance Act1996)が制定され,1996年11月には被害者に対する支援の総合的窓口として,ビクトリア州法務省内に被害者支援・仲介サービス(Victims Referral and Assistance Ser-Vice)の設立が宣言され,翌1997年から運営が始まった。