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 平成11年版 犯罪白書 第5編/第7章/第7節/5 

5 州レベルでの被害者施策(オンタリオ州)

 刑事司法の運用の権限は原則として各州に帰せられており,犯罪被害者に関する施策についても,州により違いが見られる。以下では,オンタリオ州について,現在行われている被害者施策の概要を見ることとする。
 オンタリオ州においては,1996年に「犯罪被害者の尊重に関する法律ー被害者の権利章典」(An Act Respecting Victims of Crime-Victims’ Bi11 of Rights)が施行されている。同法では,犯罪被害者に関する司法の基本原則についての規定のほか,被害者司法基金(Victim Justice Fund)についての規定が設けられている。同基金は,刑事法典に規定されている付加罰金及び州独自の付加罰金による歳入で賄われており,各種の被害者支援プログラムに対してその資金を提供している。司法省(Ministry of the Attorney General),法務矯正省(Ministry of the Solicitor General and Cor-rectionalServices)等の州政府機関が関与する主なプログラムとしては,次のようなものがある。
[1] 被害者・証人援助プログラム(Victim/Witness Assistance Pro-gram)
 被害者及び証人に対して,法廷の案内,刑事司法過程についての説明,保釈や保護観察の遵守事項等に関する情報提供,法廷への同伴,関係機関との連絡調整等を行う。
[2] 被害者危機援助・仲介サービス(Victim Crisis Assistance& Refer-ralServices)
 犯罪及び災害の被害者に対して,24時間体制で緊急の支援を行うものである。被害者司法基金から資金を得て,地域社会の中に設けられた組織が運営している。実際の活動は,警察の協力を得ながら,ボランティアが行っている。
[3] 性的暴行・強姦危機センター(Sexual Assault/Rape Crisis Cen tres)
 性的暴力の被害者等を対象に,24時間体制の電話相談,警察・裁判所・病院等への同伴,個別又は集団でのカウンセリング等を行う。地域社会のボランティア組織が運営に当たる。
[4] 被害者支援ライン(Victim Support Line)
 無料の専用電話により,州内の矯正施設に収容されている成人犯罪者の釈放に関する情報提供,加害者の釈放の決定に当たって被害者側の懸念を考慮してもらうための方法の教示,どこに行けば必要な援助が受けられるかの情報提供等を行う。