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 平成11年版 犯罪白書 第5編/第7章/第7節/3 

3 矯正保護における被害者施策

 カナダでは,犯罪者の処遇は,基本的には州政府の管轄とされている。ただし,刑期2年以上の実刑に処された者については,連邦政府が管轄する。連邦政府における犯罪者処遇の担当部局として,法務省(Ministry of the Sollcitor General)に,矯正保護局(Correctional service of Canada)及び全国仮釈放委員会(National Parole Board,以下,本項において「仮釈放委員会」という。)が置かれている。矯正保護局は,刑期2年以上の受刑者に対する施設内処遇と仮釈放後の保護観察に関する権限を有し,仮釈放委員会は,連邦刑務所に収容されている受刑者と,州仮釈放委員会のない州の刑務所に収容されている受刑者に対する仮釈放に関する権限を有している。
 1992年に公布された「矯正及び条件付き釈放に関する法律」により,連邦レベルでの犯罪者の矯正処遇及び条件付き釈放の過程における犯罪被害者の位置づけが,正式に規定されることとなった。同法は,被害者(その家族等を含む。以下,本項において同じ。)への情報提供について,次のとおり規定している。
 矯正保護局及び仮釈放委員会は,被害者が希望する場合には,加害者の氏名,罪名,有罪判決を言い渡した裁判所,刑の始期,刑期,一時的釈放又は仮釈放の条件を満たす日及び審査日についての情報を被害者に開示する。また,被害者の利益が加害者のプライバシーの侵害より明らかに重要であると考えられる場合には,加害者の年齢,受刑施設の所在地,釈放田釈放に当たっての遵守事項,帰住予定地等についての情報も提供することができる。
 被害者は,書面又は仮釈放委員会委員との面接により,同委員会に情報を提供することができ,同委員会は,加害者の条件付き釈放を審査する際には,その情報を考慮に入れなければならない。
 被害者は,加害者の条件付き釈放に関し,仮釈放委員会に対して,書面で意見を提出することが許されている。また,加害者に対する面接審理の際に,傍聴人として出席することもできるが,その場で発言することはできない。面接審理に当たって提出される資料は,被害者の安全や刑務所の保安等が脅かされるおそれがあると考えられる場合を除き,すべて加害者にも開示されることになっている。
 被害者に対して矯正処遇や条件付き釈放に関する情報提供等を円滑に行うため,矯正保護局の地方本部,刑務所及び保護観察所には,被害者支援の担当官が置かれている。また,仮釈放委員会の地方事務所には,被害者やその家族が容易に情報提供を受けられるよう,専用電話が設けられている。