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 平成11年版 犯罪白書 第5編/第7章/第4節/1 

第4節 ドイツ

1 犯罪被害者施策の沿革

 ドイツにおいては,従来,犯罪被害者の刑事手続への関与等に係る制度′として,刑事訴訟法等に基づき告訴(Strafantrag),私人訴追(Privatk一1age),訴訟参加(Nebenklage),附帯私訴(Adh且sionsverfahren)等の制度が設けられていたが,さらに,1976年に,暴力犯罪被害者の補償に関する法律(Gesetz Uber die Entsch adigungfurOpfer von Gewalttaten,以下,本節において,「被害者補償法」という。)が制定された。同法により,暴力犯罪の被害者は,その申請に基づき,治療及び職業上のリハビリテーションのための費用,収入能力の減退の程度に応じた年金などの支給を含む補償を受けることができることとなった。なお,同年に民間の被害者支援団体「白い環」(WeisserRing)が設立された。
 また,1986年には,被害者の地位の改善・強化を図る観点から,刑事手続における被害者の地位改善に関する第一次法律(ErstesGesetzzurVer一besserungderStellungdesVerletztenimStrafverfahren,以下,本節において,「被害者保護法」という。)により,刑事訴訟法の規定が改正され,被害者の訴訟参加制度,附帯私訴制度等の規定が改められるとともに,被害者の任意的な手続関与権が新たに設けられることとなった。
 一方,1985年ころから,加害者と被害者との和解プロジェクトが各地で実施されるようになったが,1994年に成立した,刑法,刑事訴訟法及びその他の法律の一部改正に関する法律(GesetzzurAnderungdesStrafgesetz一buches,derStrafprozeBordnungundandererGesetze)により,損害の回復及び加害者と被害者との和解に関し,刑法の規定が改正された。
 その後,1998年には,証人である被害者が尋問によって受ける精神的苦痛を軽減すること等を目的として,刑事手続における尋問の際の証人の保護及び被害者保護の改善のための法律(GesetzzumSchutzvonZeugenbeiVernehmungenimStrafverfahrenundzurVerbesserungdesOpfer-schutzes)により,刑事訴訟法等の規定が改正され,また,同年,被害者の損害賠償を求める権利の強化を図ることを目的として,犯罪行為の被害者の民事請求権の確保に関する法律(GesetzzurSicherungderzivilrecht11chen AnsprUchederOpfervonStraftaten,以下,本節において,「被害者民事請求法」という。)が制定された。