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 平成11年版 犯罪白書 第5編/第6章/第2節/3 

3 被害者等に対する意識

 (1)被害者等の気持ちを聞いたことの有無
 V-80表は,「事件についての被害者やその家族の実際の気持ちを聞いたことがありますか」と尋ねた結果を,非行名別に示したものである。70%以上の者が「聞いたことはない」と答えている。「聞いた」とするものでは,被害者やその家族の調書の内容を通して聞いたもの(15.0%)が多い。

V-80表 非行名別被害者等の気持ちを聞いたことの有無

 V-30図は,「被害者の気持ちについて,くわしく知りたいと思いますか」と尋ねた結果を,非行名別に示したものである。「知りたいと思う」ものの比率が「知りたいとは思わない」ものの比率を大きく上回っている。また,「知りたいと思う」とするものについて,「何についてくわしく知りたいと思うか」について重複選択で回答を求めた結果を見ると,ほとんどの者(84.8%)が「自分に対してどういう感情をもっているか」を挙げている。

V-30図 非行名別被害者感情に対する関心の有無

 (2)被害者等の感情に関する認識
 V-81表は,「被害者やその家族は,現在,あなたに対してどんな気持ちだと思いますか」を重複選択で尋ねた結果を,非行名別に示したものである。総数で見ると,「すでに自分を許す気持ちになっている」,「今回の処分で,なっとくしている」は,それぞれ6.7%,15.6%にとどまり,「自分がいつまでも施設から出てこないことをねがっている」,「一生,自分をにくみつづける」が,それぞれ35.0%,43.3%となっている。少年に対する被害者側の厳しい見方についての自覚がうかがわれる。さらに,これを非行名別に見ると,殺人等,強姦等では,「一生,自分をにくみつづける」が,それぞれ85.8%,79.1%であり,「自分がいつまでも施設から出てこないことをねがっている」も,それぞれ46.0%,55.6%と多い。窃盗では,「一生,自分をにくみつづける」が28.1%,「自分がいつまでも施設から出てこないことをねがっている」が26.5%である一方,「損害さえもどればいいと考えている」,「今回の処分で,なっとくしている」が,それぞれ24.2%,20.4%となっている。

V-81表 非行名別被害者等の感情に関する認識

 (3)処分についての被害者等の感情に関する認識
 V-31図は,「被害者やその家族は,あなたの処分(少年院送致)について,どんな気持ちだと思いますか」と尋ねた結果を示したものである。半数近くの42.0%の者は「わからない」と答えているが,「軽すぎると思っている」が34.5%となっているのに対し,「適当であると思っている」19.1%,「重すぎると思っている」4.5%となっている。加害少年が,自己の処分に対する被害者側の厳しい見方を自覚していることがうかがわれる。

V-31図 非行名別処分についての被害者等の感情に関する認識