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 平成11年版 犯罪白書 第5編/第5章/第6節 

第6節 まとめ

 調査結果の概要は,以下のとおりである。
 [1]事件が被害者等に及ぼした影響については,日常生活面への影響が「あった」とするものが全体の86.2%に達し,また,精神的影響が「あった」とするものが90.4%に及ぶなど,調査対象者の大半が日常生活面及び精神的に深刻な影響を受けている。事件後平均12年余り経過した調査時点においても,43.6%のものが,精神的影響を中心として今も困っていることが「ある」としている。
 [2] 加害者に対する被害者等の感情では,「憎い」及び「かかわりたくない」とするも゜のが多く,また,加害者に対する感情の変化については,「変化なし」とするものが6割を超えている。変化したものの変化の要因については,1時の経過とともに」が大半で,「謝罪や賠償が成立した」を挙げたものはない。一方,事件からの経過年数と加害者に対する感情との関連を見ると,刑名の大半が無期懲役である,経過年数が15年以上の事案において,「憎い」とするものが3分の1を占めているなど,年数が経過してもなお加害者に対する感情が融和しないものが少なくないことがうかがわれる。
 [3] 加害者に対する判決結果については,知っているとするものが約8割を占め,さらに,判決結果を知りたくないとしたものを除き,判決に対する評価を尋ねたところ,「軽すぎる」が65.5%,「ちょうどよい」が14.9%で,「重すぎる」と答えたものはなかった。
 [4] 加害者の社会復帰(仮釈放)に関しては,過半数が1絶対反対」と答えている。「絶対反対」の比率は,経過年数15年以上でも56.7%に達しており,刑名の大半が無期懲役である事件の被害者等においては,年数が経過してもなお社会復帰に反対するものが少なくないことがうかがわれる。
 [5]釈放時期など加害者に関して知りたい事項が「あら」としたものは43.6%である。一方,「犯罪被害者等に対する給付金支給制度」について知っているとしたものは約4割であり,また,保護観察所など刑事司法機関に対しては,約3割のものが援助サービスを「要望する」としており,相談援助を含めた多方面にわたる要望が寄せられている。