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 平成11年版 犯罪白書 第5編/第4章/第2節/5 

5 被害額・被害回復状況と処分内容

 V-44表は,財産犯の罪名別・被害額別の処分内容を見たものである。窃盗においては,被害額が多額の事案の方が,少額の事案と比べて,実刑判決の比率が高く,起訴猶予の比率が低くなっており,詐欺及び横領においても,被害額が多額の事案の方が,少額の事案と比べて,実刑判決の比率がおおむね高くなっている。一方,強盗及び恐喝においては,このような被害額による処分内容の相違は見られない。

V-44表 財産犯の罪名別・被害額別処分内容

 さらに,財産犯全体について,被害額・被害回復の程度別に,起訴猶予の比率を見たのがV-7図であり,実刑判決の比率を見たのがV-8図である。

V-7図 財産犯の被害額・被害回復率と起訴猶予の比率

V-8図 財産犯の被害額・被害回復率と実刑判決の比率

 全体として,被害額が多額になるに従い,起訴猶予の比率が低く,実刑判決の比率が高くなっている。また,同程度の被害額であっても,被害回復率が高いほど,おおむね起訴猶予の比率が高く,実刑判決の比率は低くなっている。被害額1万円以下の事案について見ると,起訴猶予の比率が,被害全額回復では80%近くに達しているのに対し,全く被害回復なしでは30%程度にとどまっている。他方,被害額500万円を超え1,000万円以下及び1,000万円を超える事案について見ると,実刑判決が,全く被害回復なしでは,いずれも80%を超えているのに対し,被害全額回復では30%から50%程度にとどまっている。