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 平成11年版 犯罪白書 第2編/第3章/第2節/3 

3 上訴審

 平成9年及び10年に言い渡された第一審判決に対する控訴率を見ると,地方裁判所の判決に対しては,それぞれ9.9%,10.2%,簡易裁判所の判決に対しては,それぞれ5.5%,5.1%となっている。10年の高等裁判所の控訴受理人員は5,670人で,これを控訴申立当事者別に見ると,被告人側のみの申立てによるものは5,557人(98.0%),検察官のみの申立てによるものは89人(1.6%),双方からの申立てによるものは23人(0.4%),最高裁判所からの破棄差戻し1人(0.0%)である(司法統計年報による。)。
 II-7表は,平成9年に高等裁判所が控訴審として処理した結果を,罪名別に見たものである。終局処理人員総数(5,450人)に占める比率は,控訴棄却が67.9%,取下げが18.5%,破棄自判が13.1%である。これを罪名別に見ると,取下げ率は,暴力行為等処罰法違反(30.2%),覚せい剤取締法違反(26.1%),窃盗(24.9%),詐欺(20.3%)が高く,また,破棄自判率は,業過(33.8%),強姦・強制わいせつ(22.9%),傷害・暴行・凶器準備集合(22.6%),詐欺(18.7%)が高い。破棄理由を見ると,破棄人員総数721人のうち147人(20.4%)は量刑不当によるものであり,自判の結果,裁判が覆されて無罪となった者は5人で,終局処理人員総数の0.1%を占めている。
 なお,検察官が第一審の無罪判決を不服として控訴した事件のうち,平成9年に12人の被告人に対し控訴審の裁判が行われているが,そのうち10人(83.3%)については,第一審判決が覆されて有罪となっている(検察統計年報による。)。
 平成9年及び10年に言い渡された控訴審の判決に対する上告率を見ると,全体では,それぞれ37.6%,39.2%で,いずれの年も第一審判決に対する上訴率に比べると高くなっている。10年の最高裁判所の上告受理人員は1,643人である。また,9年に最高裁判所が上告審として終局処理した人員は1,431人で,その内訳は,上告取下げ316人(22.1%),上告棄却1,112人(77.7%),原判決破棄1人(0.1%)となっている(司法統計年報による。)。

II-7表 罪名別控訴審終局処理人員