前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和38年版 犯罪白書 第四編/第二章/四/2 

2 麻薬に関する国際的取締機関

 麻薬は関する国際協力は,さきに掲げた各条約等に基づく義務として,各国により着々実施されてきているが,国際社会の中核として一九四五年に発足した国際連合は,当然麻薬取締りに関しても重要な役割を果している。以下国際連合の麻薬取締りについての機構概略を述べることとする。
 国際連合における麻薬関係機関は,以下述べる八機関であり,その関係はIV-4図のとおりである。

IV-4図 国連麻薬取締機関機構図


(1) 国際連合経済社会理事会は,各国政府が国際麻薬条約を守っているか否かを監視する役目を持っており,特に毎年麻薬委員会や常設中央委員会から報告を受けている。
(2) 麻薬委員会は,経済社会理事会に属する他の機能委員会が,すべて理事会によって創設されたものであるのに反し,従前の長期にわたる国際連盟の麻薬統制事業を継承したという特色を持っており,事実上,麻薬の国際統制の最高機関であり,各国から提出される麻薬取締り,不正取引等についての諸報告を検討し,国際的麻薬取締りについての一般的な政策を考案し,またこの問題についての立法をもする。
(3) 事務局麻薬部は国際連合事務局の一部局であり,麻薬問題の技術面について,右理事会,麻薬委員会,国連事務総長の補佐にあたる。
(4) 麻薬研究所は国際連合事務局麻薬部に所属し,現在,あへんの共同研究にあたっている。
(5) 世界保健機関は,麻薬関係では一九二五年の第一あへん会議協定,一九三一年の制限条約および一九四八年の右制限条約の範囲外の薬品を国際統制のもとにおく議定書に基づき,新しく薬物を麻薬に指定するとき,それを認定する機関である。同機関は,その組織の一部である「たんでき性薬物の専門家委員会」をその任にあたらせている。
(6) あへん常設中央委員会は一九二五年の第二あへん会議条約に基づいて設置され,同条約の実施を監督することとなったが,国際連合の設立に伴って締結された「麻薬に関する協定,条約および議定書を改訂する議定書」によって国際連合と行政上の連けいを持つものとされ,麻薬の国際間の取引きを監視し,必要なときには制裁を加える権限を持っている。
(7) 麻薬監督機関は一九三一年の制限条約に基づいて設立されたもので,形式的には独立機関であるが,国際連合と行政上の連けいは持つものとされており,国際間の取締りのため,各国における麻薬の年間必要量を算定する。この算定に対して各国政府は超過しないように努力することとされている。
(8) 合同事務局は前記あへん常設中央委員会と麻薬監督機関との連絡事務局である。