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 昭和38年版 犯罪白書 第二編/第三章/二/4 

4 累進処遇

 累進処遇は,昭和九年に定められた行刑累進処遇令によって実施された制度であって受刑者の自発的な改善への努力を,責任の加重と処遇の緩和とを通じて促進し,その度合に応じて,最下級(四級)から最上級(一級)へと,段階的に累進させようというものである。そして,最上級者に対しては,できるだけ自由を与え,自治を許すばかりでなく,仮釈放を許可する方針をとっている。この方法は,第一次大戦から第二次大戦にかけて,世界的に採りいれられた画期的なものであったが,第二次大戦後における社会思潮や法律制度の変革,ことに,人間の資質に関する鑑別および集団管理の科学的技術の進歩に伴って生みだされた分類制度の発達は,経験主義と画一性に基盤をおく累進制度に対して,重大な反省をもたらした。ことに,わが国では,仮釈放制度の運用が更生保護委員会の手にゆだねられ,階級の累進と仮釈放とが結びつかなくなったこと,戦後,人権尊重の立場からする受刑者処遇の一般的な向上によって,階級間の特権の幅が狭くなり,階級間に処遇差をつけることが困難になったこと,累進には刑期の長い者が有利で,短期刑者には全く向かないこと,累進制には科学性が乏しいこと,および分類制度の立場からは,分類級によって,その成員の特質に応じ,集団あるいは個別の優遇の方法,あるいは処遇の緩和をことにしなければならない要請のあることが累進制と矛盾すること,などの点から検討が加えられ,昭和三七年の全国矯正管区長・拘置所長・刑務所長・少年刑務所長会同においても,これらに関する対策についての問題がとりあげられている。
 昭和三六年に釈放されたものについて,釈放時の累進階級をみると,II-74表のとおりで,釈放と累進階級とはそれほど関係がなくなっている。

II-74表 出所受刑者の出所事由別・累進処遇階級別人員(昭和36年)