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 昭和38年版 犯罪白書 第二編/第一章/六 

六 検察庁における事件処理期間

 事務能率の上からも,人権擁護の立場からも,事件処理の期間は,できるかぎり短い方が望ましいことはもちろんである。昭和三六年における検察庁の事件処理期間を,告訴告発事件とその他の事件に区分し,さらにこれを刑法犯,準刑法犯と特別法犯とに区分して示すと,II-19表のとおりである。

II-19表 被疑事件処理期間別人員(昭和36年)

 この表をみて,まず考えられることは,告訴告発事件の処理に要する期間は,その他の事件の処理に要する期間より,一般に長期間を要するということである。一月以内に処理されたものの割合をみると,その他の事件のうちの刑法犯・準刑法犯は七九・七%,同じく特別法犯は七五・五%であり,告訴告発事件のうちの特別法犯は六二・三%,同じく刑法犯・準刑法犯は三七・八%となっている。次に,六月以上をみると,告訴告発事件のうちの刑法犯・準刑法犯は二七・三%,同じく特別法犯は一〇・五%であり,その他の事件のうちの特別法犯が二・五%,同じく刑法犯・準刑法犯が二・七%となっており,ちょうど前の場合の順序と逆になっている。そして,右のような事件処理期間の状況は,最近数年間ほとんど同一の傾向をとっているが,これは,告訴告発事件の民事事件に関係する複雑な事件が多く,また,むずかしい法律問題を含んでいるものが比較的多いためであると考えられる。また,告訴告発事件の中で特別法犯の事件処理期間が,刑法犯・準刑法犯のそれに比し,短期間に処理されているのは,特別法犯の中には,公務員による告発事件がかなり含まれており,これらの事件は,一面において,証拠が比較的良く整っており,他面起訴に価する事件が多いため,比較的短期間に処理される結果であるように思われる。しかしいずれにしろ,受理の時から一年を経ても処理されない事件が,告訴告発事件の刑法犯・準刑法犯のうちで一二・三%を占めており,この率は昭和三四年一三・九%,昭和三五年一二・四%で逐年減少の傾向にあるとはいえ,なおその処理方策について,一段のくふうを要するものがあると思われる。