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 平成10年版 犯罪白書 第3編/第4章/第2節/2 

2 非行の特徴

(1) 動機

 最近10年間における凶悪事犯少年の非行の動機を見ると,殺人事犯少年では大きな変動はなく,累計すると「かっとなって」(42.7%)が最も多く,次いで,「誘われて,その気になって」(11.6),「反発したくなって」(5.1%)の順となっている。
 なお,特別調査により,最近3年間の殺人事犯少年の主たる動機を累計して見ると,半数が憤まん激情(50.7%)によるものである。また,紀行起ついて計画性がある者は,32.4%を占めている。
 強盗事犯少年では,「お金や物が欲しくて」(46.8%)が最も多く,次いで,「誘われて,その気になって」(15.5%),「かっとなって」(9.6%)の順となっている。さらに,この10年間の動機別構成此の推移を見ると,「お金や物が欲しくて」は,10年間を通して1位を占めているが,その比率は低下傾向にあり,「誘われて,その気になって」の比率が上昇傾向にある。また,「かっとなって」の比率も低下傾向にある。

(2) 共犯関係

 凶悪事犯少年について,最近10年間を累計して非行時の共犯者の有無及び共犯者数を見ると,殺人事犯少年では,共犯者のいない単独(65.1%)が最も多く,次いで,共犯者数5人以上(16.3%),2人(92%)の順となっている。この10年間の推移を見ると,平成元年(単独は29.6%)を除き,いずれの年次も単独が70%前後から80%台前半と高い比率を占めている。
 強盗事犯少年では,共犯者数5人以上(28.3%)が最も多く,次いで,2人(19.5%),3人・4人(各18.9%)の順であり,単独はわずか13.0%である。この10年間の推移を見ると,単独の比率が昭和63年の27.1%から平成9年の7.1%へと低下する一方,5人以上の比率が昭和63年の16.5%から平成9年の35.4%へと上昇し,また,4人の比率も昭和63年の14.7%から平成9年の21.4%へと上昇するなど,多数の共犯による犯行が増加していることがうかがわれる。
 さらに,凶悪事犯少年の共犯者との関係を見ると,殺人事犯少年では,暴走族(12.2%),地域仲間(6.1%),暴力団(5.9%)が主なものであるが,強盗事犯少年では,地域仲間(56.7%)が圧倒的に多く,学校仲間(11.3%),暴走族(7.7%)がこれに次いでいる。

(3) 被害者数及び被害者との関係等

 特別調査により,最近3年間の殺人事犯少年について,被害者数別に累計して見ると,被害者が1人の者(83.8%)が8割を超えているが,被害者が2人の者が12.8%,3人の者が1.7%,4人の者が1.7%となっている。
 また,被害者との面識の有無,面識があった場合における面識の程度を見ると,面識があるのは,70.4%であるが,そのうち,よく知っている者の比率(55.6%)が5割を超える。面識がないのは25.4%である。

(4) 犯行の方法及び凶器の準備状況等

 III-19表は,特別調査により,最近3年間における殺人事犯少年の主たる犯行の方法を,被害者総数142人について年次別に見たものである。犯行に際し,刃物を使用した者がどの年次でも最も多くなっている。

III-19表 殺人事犯少年の主たる犯行の方法(平成7年〜9年)

 III-20表は,同じく殺人事犯少年の犯行時における凶器の準備状況等を年次別に見たものである。

III-20表 殺人事犯少年の凶器の準備状況(平成7年〜9年)

 累計すると,たまたま携行していた物が凶器として使用された比率が35.9%と最も高くなっている。