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 平成10年版 犯罪白書 第2編/第4章/第3節/5 

5 各種受刑者の処遇

(1) 覚せい剤事犯受刑者

 平成9年12月31現在の覚せい剤事犯受刑者は,受刑者総数の30.3%(1万2629四人〉を占め,特に女子においては女子受刑者総数の49.0%(973人)となっている。9年の新受刑中に占める覚せい剤事犯受刑者の割合は29.7%(6725人)である。覚せい剤事犯受刑者に対しては,覚せい剤とのかかわりの程度,犯罪傾向の進度,年齢等に応じて,覚せい剤濫用防止指導がなされている。また,一般受刑者を対象とする覚せい剤の害悪についての啓発活動も活発に実施されている。

(2) 暴力団関係者

 II-26表は,最近3年間の各年末における受刑者中に占める暴力団関係者の収容状況を見たものである。

II-26表 暴力団関係受刑者数(平成7年〜9年各12月31日現在)

 平成9年における新受刑者中に占める暴力団関係者の数は,3413人であり,その内訳は,幹部1122人,組員1964人,地位不明の者327人となっている。
 暴力団関係者の処遇に当たっては,組織からの離脱指導を積極的に行うとともに,厳正な規律と秩序の維持に格段の注意を払い,受刑者間の人間関係をよく把握し,地元暴力団関係者の分散収容を行うなど,保安及び警備を厳重にしている。また,生活指導を強化し,勤労の習慣を身に付けさせるよう指導している。

(3) 外国人受刑者

 平成9年の外国人新受刑者は,1150人であり,そのうち,「日本人と異なる処遇を必要とする外国人」と判定された者(以下,「F級新受刑者」という。)は,363人(男子352人,女子11人)である。
 平成9年のF級新受刑者の主要罪名別人員は,窃盗が94人(25.9%)で最も多く,次いで,覚せい剤取締法違反59人(16.3%),入管法違反57人(15.7%),強盗致死傷28人(7,7%),殺人22人(6.1%)の順となっている(矯正統計年報による。)。
 F級受刑者(F級と判定された外国人受刑者をいう)は,言語だけでなく,風俗・習慣・宗教上の慣行等において日本人の受刑者と著しく異なる点があり,男子は府中・横浜・横須賀・黒羽・大阪・神戸・名古屋・広島・福岡・札幌の各刑務所に,女子は栃木刑務所に収容され,必要に応じて日本人とは異なる処遇を受けている。特に,近年におけるF級受刑者の急増に伴い,平成7年には府中刑務所に,9年には大阪刑務所に,それぞれ国際対策室を設置し,外国語による被収容者の面会,信書の発受等に際しての通訳・翻訳業務の円滑な実施を図っている。
 平成9年12月31日現在のF級受刑者数は,705人(男子681人,女子24人)である。

(4) 女子受刑者

 平成9年の女子新受刑者は,1150人で,新受刑者全体の5.1%を占めている。女子受刑者を収容する施設は,栃木・和歌山・笠松・岩国・麓の各刑務所及び札幌刑務支所の6か所であり,A級B級等の収容分類級に応じて男子刑務所のように施設を別にして収容することはないが,施設内における工場,居室の指定等に当たっては,収容分類級が考慮されている。
 女子受刑者については,その特性に応じた職業訓練のほか,通信教育や所内の教養講座の受講が奨励され,また,短歌俳句,コーラス,生花等のクラブ活動も行われている。

(5) 高齢受講者

 平成9年の新受刑者中に占める60歳以上の受刑者は,1591人であり,これは新受刑者全体の70%となっている。我が国では60歳以上の高齢受刑者を収容する施設は特に指定されておらず,高齢受刑者は,その収容分類級に従って各行刑施設に分類収容されている。
 処遇上,特に留意を要する60歳以上の高齢受刑者が増加傾向にあるところがら,多数の高齢受刑者を収容する行刑施設の中には,高齢受刑者専用の特設工場や居室を設けているところがある。作業については,体力に応じて軽作業を課し,健康診断の画数を増やしている。