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 平成10年版 犯罪白書 第2編/第3章/第3節/5 

5 執行猶予等

(1) 執行猶予

 昭和43年以降の30年間における有期懲役・禁錮確定人員中の執行猶予率の推移はII-12図のとおりである。

II-12図 有期懲役・禁錮確定人員中の執行猶予率の推移(昭和43年〜平成9年)

 懲役に対する執行猶予率は,平成5年までは昭和51年を除き50%台であったが,平成6年以降は60%台で推移している。禁錮に対する執行猶予率は,懲役に対するものよりも高く,昭和56年以降は90%台で推移している。
 また,初度の執行猶予の場合は,同時に保護観察に付するか否かは裁判所の裁量によるが,再度の場合は,必ず保護観察に付される。平成9年における初度の執行猶予人員は4万224人(執行猶予確定人員の98.4%)で,うち保護観察に付された者は4355人(同10.7%)である。また,再度の執行猶予人員は666人(同1.6%)である。

(2) 執行猶予の取消し

 II-13表は,最近5年間における,執行猶予取消人員を取消事由別に見たものである。

II-13表 取消事由別執行猶予取消人員(平成5年〜9年)

 取消人員は,平成9年には,前年より457人(9.8%)増加して5,103人となっており,取消事由は,再犯により禁錮以上の刑に処されたことによるものが95.0%と圧倒的に多数を占めている。
 なお,ある年次における執行猶予確定人員と,その年次における執行猶予取消人員とでは,その対象が異なるので,前者に輝する後者の比率は,厳密な意味での執行猶予取消率とは言えないが,執行猶予取消しのおおよその傾向を知るため,この比率を算出すると,執行猶予取消率及び保護観察付き執行猶予者の再犯による取消率は,いずれも近年上昇する傾向にあり,平成9年においては,それぞれ12.5%及び28.5%となっている。これを罪名別(執行猶予確定人員総数又は保護観察付き執行猶予確定人員が100人以上のものに限る。)に見ると,執行猶予取消率は,毒劇法違反(65.4%),覚せい剤取締法違反(22.3%)等で高く,保護観察付き執行猶予者の再犯による取消率は,窃盗(35.1%),覚せい剤取締法違反(33.9%)等で高い。